2022 Fiscal Year Annual Research Report
マクロライド系抗生剤の新規オートファジー阻害活性機序の解明とがん治療への応用展開
Project/Area Number |
20K07298
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
高野 直治 東京医科大学, 医学部, 准教授 (80445410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / マクロライド / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシン(AZM)のオートファジー抑制機構の解明と、現在既に用いられているオートファジー阻害薬であるハイドロキシクロロキン(HCQ)との比較、がん幹細胞への影響の検証、そして担癌マウスモデルに抗がん剤とAZMを併用した際の抗腫瘍効果の検証を行った。AZMによるオートファジー抑制は、ケラチン、チューブリンといった細胞骨格との相互作用を介した、リソソーム内酵素の成熟の阻害がその仕組みの1つであることが明らかとなった。また、HCQとの比較を通し、HCQがMAPKカスケードのERKの活性化を引き起こすがAZMにはその効果が無いこと、また、シャペロン介在性オートファジーの阻害によるHIF-1aの蓄積が、HCQでは起こるがAZMでは起こらないことが明らかとなった。HIF-1aの蓄積の結果、がん幹細胞マーカーの発現上昇がHCQでは見られたが、AZMでは見られなかった。これらの結果から、がん治療においては、がん幹細胞マーカーの発現上昇を伴わないAZMの方が良い可能性が示唆された。 マウス担癌モデルに抗がん剤とAZMを併用を行い、AZMによる抗腫瘍効果についても検証を行った。AZM単剤による腫瘍成長の抑制が確認できた。しかしながら、抗がん剤との併用による抗腫瘍効果の増強は、抗がん剤単剤による抗腫瘍効果が強すぎたこと、また薬剤の経口投与を行う際の技術的な問題によって十分に検証を行うことができず、今後の課題として残った。 以上の結果から、AZMのオートファジー阻害機構を明らかとし、HCQとの比較により、がん幹細胞マーカーの発現上昇を引き起こさず、また、マウス担癌モデルを用いた実験から、AZM単剤の経口投与による腫瘍成長の抑制効果を示すことができ、将来的にAZMをがん治療へ用いるための基盤となる研究成果をあげることができた。
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Research Products
(5 results)