2021 Fiscal Year Research-status Report
インスリン様成長因子等による側鎖型オキシステロール産生調節を介した新規情報伝達
Project/Area Number |
20K07314
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
杉本 博之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (00235897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安戸 博美 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10704885)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オキシステロール / シトクロムP450 46A1 / コレステロール25-ヒドロキシラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
コレステロールは炭化水素鎖が酵素によりヒドロキシル化を受けると生理活性を有する側鎖型オキシステロールに代謝される。NIH3T3細胞を用いて側鎖型オキシステロール25-hydroxycholesterol(25-HC)の産生酵素cholesterol 25- hydroxylase(Ch25h)の転写や酵素活性に注目し研究を進めてきたが、Ch25hはone-exon geneのためRT-PCRによる転写産物がmRNA量を反映するものではなく、ゲノムDNAのコンタミによるアーティファクトを観察してきた可能性が考えられる様になった。そこでNIH3T3細胞由来のtotal-RNAをDNAase処理してからCh25h-RT-PCRを施工したところCh25hのmRNAが認められなくなった。RTを行わずCh25h-RT-PCRを施工したところ、RTの施工が無くてもPCR産物が同様な量で認められた。以上からNIH3T3細胞にはCh25h-mRNAの転写が認められないと結論付けた。 そこで他のオキシステロール産生酵素の転写に注目し解析した。その結果、NIH3T3細胞にはCytochrome P450 46a1 (CYP46a1)が発現している事を見出した。この酵素の転写はfetal bovine serum(FBS)添加により抑制され、FBS中の本転写抑制因子がインスリン様成長因子-II(IGF-II)であることをつきとめた。CYP46a1はコレステロールから24S-ヒドロキシコレステロール(24S-HC)を産生することが知られていたが、当研究室においてd-cholesterolを基質にし産生されるオキシステロールを同定し、内因性25-HCも産生されることが示された。本研究の結果は、BBA-MCBL 2022、に掲載となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ch25hはone-exon geneのためRT-PCRによる転写産物がmRNA量を反映するものではなく、ゲノムDNAのコンタミによるアーティファクトを観察してきた可能性が考えられる様になった。そこで他のオキシステロール産生酵素に注目し解析を進めた。 これまでにオキシステロール産生酵素としてシトクロム P45046a1(CYP46a1)(24S-ヒドロキシコレステロール(24S-HC)産生)、CYP27a1(25-HC産生)、CYP3a11(25-HC産生)が知られている。これらコレステロール水酸化酵素のどれがNIH3T3細胞に発現しているのか調べたところ、主にCYP46a1の転写の十分な発現が認められた。さらにCYP46a1の転写がFBS添加により抑制されること、FBS中のインスリン様成長因子等により抑制を受けることをFBSをHPLCで分画した質量解析から見出した。CYP46a1はコレステロールから24S-ヒドロキシコレステロール(24S-HC)を産生することが知られていたが、当研究室において高発現系を利用した内因性オキシステロールの産生を解析し、25-HCも産生されることが示された。本研究の結果は、BBA-MCBL 2022、に掲載となった。
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Strategy for Future Research Activity |
NIH3T3細胞をIGF-I、 IGF-II、 インスリンで刺激するとCyp46a1-mRNA量が低下すると共に内因性のオキシステロール量(24S-HC、 25-HC、 27-HC)が低下することが明らかになった。これらの現象がこれらホルモンの受容体を介して行われるか否か受容体の阻害剤を添加し解析したり、これら受容体の下流のシグナル分子がどのように関わるのか解明する。細胞内オキシステロール量の低下がシグナル伝達に本当に関与するのか否かも確認する。 Ch25hはone-exon geneのためRT-PCRによる転写産物がmRNA量を反映するものではなく、ゲノムDNAのコンタミによるアーティファクトを観察してきた可能性が考えられるようになった。しかしながこの現象は、FBSスターブ状態で増加し、FBSやIGF-II添加で低下することは明白である。そこでこれらの現象は、Ch25hのゲノム上のコピー数が増加するためであり、単なるゲノムDNAのコンタミではないことを想定し研究を進める。つまり生理学的にゲノム遺伝子(今回の我々の研究ではCh25h)がホルモン刺激で増減する可能性を考え研究を行う。デジタルPCR装置やwhole genome sequenceを行い解析する予定である。そしてこれらの現象に関わるタンパク質装置を見出す。この現象は癌細胞の増殖因子のゲノムコピー数が増加することにも関与すると想定している。
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Causes of Carryover |
今年度にコレステロール25-ヒドロキシラーゼの転写制御機構を解明する予定であったが、mRNAレベルではなくゲノムDNAレベルで制御を受ける可能性が示唆され、解析法が難しく来年度に持ち越すことにした。その代わり今年度はCYP46A1の転写制御機構に注目し解析を行いBBA-MCBLにその成果を発表した。来年度は総括の年であり、ゲノム解析の新規事業も加わるため配分額よりも研究費が必要となる。
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Research Products
(2 results)