2022 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のメチル化修飾を介した新たな骨格筋量の制御機構の解明とその臨床応用
Project/Area Number |
20K07315
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
常陸 圭介 藤田医科大学, 医科学研究センター, 講師 (10508469)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 筋萎縮 / メチル化酵素 / 翻訳後修飾 / 筋機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋は運動や姿勢の維持に必要なだけでなく、体温調節やマイオカイン分泌などを通じて我々が健康に暮らすために必須の臓器である。骨格筋の量は、外部からの刺激に応じて変化する。老化や疾患(心不全、腎不全、COPD、筋疾患など)のみならず、多様な要因で生じる骨格筋量の減少(筋萎縮)は、骨格筋機能の破綻につながり、疾患での生存率や健康寿命の延伸を妨げる主要因である。しかしながら、筋萎縮を引き起こす分子機構の詳細は未だ不明であり、安全で有効な治療方法も存在していない。本研究課題では、このような筋萎縮の問題を解決すべく、我々が発見したメチル化酵素に着目して研究を行った。
タンパク質のメチル化修飾の変化が骨格筋に与える影響の大部分は未解明である。本年度は、メチル化修飾の有無により筋タンパク質の活性や構造にどのような変化が出るかを、分子シミュレーションを用いて解析を進めた。その結果、メチル化修飾の有無によって骨格筋タンパク質の立体構造に変化が生じることを明らかにした。さらに、筋タンパク質のメチル化修飾部位に変異を導入した遺伝子改変マウスに対して、筋肥大処理と筋萎縮処理を行った。このマウスでは絶食処置を行った場合に野生型マウスと比べて萎縮が促進することを見出した。ゲノム編集によるメチル化修飾部位に変異を有する遺伝子改変マウスの作製過程で、骨格筋ミオシンのダブルノックアウトマウスを得ることができた。このダブルノックアウトマウスについての解析を進めた結果、ミオシンIIxとIIbの同時欠損によってこれまで予想されていたよりも重度の筋萎縮が生じることを明らかにした。これらの結果から、筋タンパク質のメチル化修飾は、骨格筋の量を制御する新たな分子機構であると考えられる。今後、メチル化を標的とした創薬開発を進めることで、筋萎縮の予防・治療法の開発が可能になると考えられる。
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Research Products
(7 results)