2020 Fiscal Year Research-status Report
コレステロール誘導体による生体内脂質の新規合成制御機構の解明
Project/Area Number |
20K07329
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
安戸 博美 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10704885)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン脂質 / コレステロール / 細胞膜 / ヒストンアセチル化 / p300 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞膜を構成する主要な脂質であるホスファチジルエタノールアミン(PE)とコレステロールの、オキシステロールによる合成制御機構を詳細に調べる事である。申請者らのこれまでの研究により、オキシステロールは転写因子NF-Yによるヒストンアセチル化を抑制し、PE合成の律速酵素ETおよびコレステロール合成の律速酵素Hmgcrの転写を負に制御することが明らかになった。その制御機構の詳細を分子基盤から明らかにする。 1.ETおよびHmgcrのオキシステロールによる転写抑制機構の解明 転写促進因子NF-YはNF-YA, NF-YB, NF-YCの3つのサブユニットから構成され、ETやHmgcrのプロモーターに結合し、ヒストンアセチル化酵素p300をリクルートする。p300はヒストンのH3Lys27部位をアセチル化し転写を正に制御する。代表的なオキシステロールである25-HCはこのp300のリクルート、ヒストンアセチル化を阻害し転写を抑制する。申請者が見出した以上の研究成果を踏まえ、p300とNF-YBの直接の結合を免疫沈降 (IP) によって確認することができた。 2.PEの合成制御により細胞膜のホスファチジルコリン(PC)とPE比の異常が改善されるのか PCとPEは細胞膜を構成する主要なリン脂質である。PC/PE比の低下により発生したマウスの脂肪肝、肝不全がその量比を人為的に正常に戻すことで改善するという報告があるため、PC合成の律速酵素CTαのKO細胞を作成しPC、そしてPC/PE比を低下させる。そこにオキシステロールを投与しPEを低下させ、PC/PE比が正常に戻るのか確認する。また、PCを低下させたことによる細胞内のリン脂質組成の変化をLC-MS/MSを用いて評価する。上記を目的として現在CTαのKO細胞の作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたとおり、p300とNF-YBの直接の結合を免疫沈降法(IP)で確認した。その結合が25-HCにより阻害されるのか確認中である。p300とNF-YBの直接の結合を確認するための検討に多少の時間を要したが、結合が確認できたため25-HCにより阻害されるかの検討段階に入った。また、CRISPER-Cas9システムを用いてCTαKO細胞を作成中であり、現在KO細胞のクローニング中である。ウエスタンブロットでCTαKOを評価するための抗体の検討、CTαと同じ機能を持つ酵素CTβの発現が代償的に上昇するかどうかの検討にも時間を要したが、おおむね順調に進展してると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
p300とNF-YBの直接の結合を免疫沈降法(IP)で確認したが、その結合が25-HCで阻害されるかどうか確認する。また同時に、p300とNF-Yが形成する巨大な転写因子複合体中に存在する他の因子を同定する。NF-YB抗体を用いてIPを行い、転写因子複合体を回収する。その複合体をnano LC-MS/MS (Sciex 6600) で解析し、構成タンパク質の詳細を同定する。さらに25-HC添加の有無により複合体を構成するタンパク質の違いを見出し、オキシステロールによる転写抑制機構にどのようなタンパク質が関与するのかを同定する。オキシステロールによる転写制御に関与するタンパク質が同定できた場合、オキシステロールとの直接の結合の有無を確認する。 また、CTαKO細胞が樹立されたのち、細胞内の脂質組成をLC-MS/MS(Sciex5500)で解析し、細胞内のリン脂質組成を確認する。PC/PE比が低下していた場合、細胞内にオキシステロールを投与してPE量を低下させ、PC/PE比が正常に戻るのか確認する。
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Causes of Carryover |
KO細胞作成に必要な抗体を他の研究室より融通してもらった事、実験が質量分析をする段階にまで至らず質量分析用の試薬やカラム等を購入する必要がなかった事などから、消耗品の使用額が予定より下回った。また、参加予定であった学会がオンライン開催となったため旅費が不要となった。以上の理由により使用額が予定額を下回った。次年度も本年度と同様、生化学実験、細胞培養、また質量分析用の試薬などの消耗品として使用予定である。
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Research Products
(1 results)