2021 Fiscal Year Research-status Report
炎症性微小環境適応機構を標的とした抗腫瘍効果の統合的検討
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20K07337
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 克博 京都大学, 医学研究科, 講師 (70739862)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | LUBAC / 直鎖状ユビキチン鎖 / 癌内炎症 / ネクローシス / 癌免疫 / 細胞死 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではユビキチンリガーゼLUBACが発揮する細胞死抑制能とそれが創り出す癌内炎症環境寛容機構に着目し、当該寛容機構が破綻することで生じる抗腫瘍効果の検討おこなっている。前年度、癌内の複数のサイトカインがLUBAC欠損メラノーマの腫瘍退縮を引き起こしていることを報告しており、本年度は、特にLUBAC欠損癌の細胞死を誘導したIFN-gの細胞内シグナル及び発現様式について探索した。LUBACにより直鎖状ユビキチン化修飾を受けるIFN-g依存的な未知の基質の同定を試みたが今回不可能であった。しかし、シグナル解析の結果からLUBACがIFN-g受容体下流のJAK-STAT1シグナルに加え、NF-kB非典型経路に対して抑制的に機能することを発見した。LUBAC欠損時に亢進する細胞死は両経路に強く依存していることを見出し、また両経路を介して発現するT細胞遊走因子CXCL9やCXCL10がLUBAC阻害剤とIFN-gとの共刺激によって大幅に発現亢進した。この結果はLUBACが関与する新たな細胞内シグナル経路を発見したと同時に、LUBAC欠損がもたらす抗腫瘍効果においてIFN-gシグナル強度の修飾が必要であることを示した。本研究成果ではさらに、免疫細胞が専ら発現すると考えられているIFN-gを、低酸素・低栄養状態にあるストレス下の癌自身が産生する可能性が示唆された。実際にIFN-g受容体欠損したメラノーマは腫瘍進展が障害されており、癌免疫治療の達成に不可欠なIFN-gが、逆に腫瘍の生存・増大に寄与している予想外の事実を見出した。更なる研究結果から最終的にLUBAC欠損による癌退縮はIFN-gだけでなく、複数のサイトカインが創り出す細胞死の相乗効果によりもたらされていると結論づけられた。現在抗PD-1抗体による癌退縮効果を引き上げる効果も得られており、次年度はそのメカニズムを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍退縮効果の解析から、あらたなLUBACの生理学的な機能が明らかになった点は大きい。さらに癌免疫との関連も示唆する結果も得られており、癌免疫解析のためのセットアップも無理なく順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在メラノーマの腫瘍モデルを中心に解析を進めている。癌内炎症環境を正確に理解するため、従来のメラノーマ癌で認められる分子レベルでの一般的知見を有効に活用しながら探索範囲を少し掘り下げていく予定である。具体的には炎症寛容機構の破綻がもたらす癌遺伝子プロファイルや代謝プロファイルの構築を目指すをことを追加し、統合的な解釈を進める。癌代謝についてはメラノーマ内の癌代謝の変動が癌の抗原提示能や免疫活性化に影響するとの研究成果が近年複数報告されていることによる。
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Causes of Carryover |
新たに試料サンプルのオミクス解析を実施する必要が生じたため、受託解析費用分を翌年度に繰越し、翌年度必要経費と合算して申請する。
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Research Products
(1 results)