2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学とプロテオミクスを組み合わせた炎症を制御する選別輸送機構の解明
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20K07340
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
茂谷 康 徳島大学, 先端酵素学研究所, 講師 (70609049)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | STING / 小胞輸送 / Sec23 / Sec24 |
Outline of Annual Research Achievements |
STINGは病原体や自己由来の細胞質DNAに応答して小胞体からゴルジ体に移行し、インターフェロン産生や炎症などの自然免疫系を誘導するシグナル伝達因子である。しかし、DNAの刺激によってSTINGがゴルジ体へ移行するメカニズムは不明である。これまでに私は、「活性化したSTINGを認識して輸送小胞に取り込むセンサー分子が存在する」という仮説のもとCRISPRゲノムワイドスクリーニングを実施し、活性化STINGが小胞体に留まる変異細胞の取得に成功している。そこで、この変異細胞における表現型がどの遺伝子の変異に起因しているかを明らかにするため、変異細胞からゲノムDNAを調製して次世代シーケンサー解析を行った。変異細胞に挿入されたgRNA配列について、野生型に比べてリード数が増えているものをランキング化し、二十個ほどの候補遺伝子を絞り込んだ。それらの候補遺伝子を個々にノックアウトした細胞を作製し、STINGのゴルジ体への移行に異常が生じるかを免疫染色によって確認した結果、Sec24CおよびSec23Bのノックアウト細胞においてSTINGの輸送が阻害された。Sec24にはA~Dの4つのファミリー分子が存在し、それぞれが小胞体膜上の特定の積み荷タンパク質を認識して輸送小胞へ取り込む分子として知られている。そこで、野生型セミインタクト細胞とSec24Cノックダウン細胞から調製した細胞質画分を混合して輸送小胞を生成・単離するin vitro 再構成実験を行い、活性化したSTINGがSec24Cを介して輸送小胞へ取り込まれることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、STINGの小胞体-ゴルジ体間の選別輸送機序を解明し、炎症制御へ向けた分子基盤を構築するため、以下の4つの研究を計画した。① STINGがゴルジ体へ移行するために必要な因子を大規模な遺伝学的スクリーニングにより同定する。② 最新プロテオミクスを用いてSTINGセンサー分子を特定し、積荷認識機能を解析する。③ In vitro 再構成系にてセンサー分子がSTINGを輸送小胞へ取り込む機能を解析する。④ 選別輸送システムを標的とした炎症制御法の開発へ向けた応用可能性を検証する。今年度は4つの目標のうち①および③を達成することができたので、計画通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したSec24CとSec23Bに着目し、これらが活性化STINGを認識して輸送小胞に取り込むセンサー分子であるという可能性を検証する。そのためには、STINGとの直接的な相互作用を見出しその認識部位を特定する。これまでにSTINGと結合する輸送因子の報告はなく、輸送過程の相互作用が極めて一過的または不安定と考えられる。この問題を克服するため、XL-MS法やTurboID法などのプロテオミクス技術を用いて相互作用解析を実施する。
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Causes of Carryover |
本年度は遺伝学的解析を中心に行い期待通りの成果をあげることができたが、これに多くの時間を費やしたため、並行して行う予定のプロテオ―ム解析が少し遅れてしまった。この解析は次年度で重点的に行なう必要性があり、その費用を次年度に回す必要性が生じた。使用計画としては、XL-MS法やTurboID法などの大規模プロテオーム解析に必要な消耗品費やLC-MS装置の分析費として使用する。また、そのために実験補助の必要性が生じ、人件費・謝金にも充てる予定である。
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Research Products
(4 results)