2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学とプロテオミクスを組み合わせた炎症を制御する選別輸送機構の解明
Project/Area Number |
20K07340
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
茂谷 康 徳島大学, 先端酵素学研究所, 講師 (70609049)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | STING / ER exit sites / APEX2 |
Outline of Annual Research Achievements |
STINGは、リガンドである環状ジヌクレオチドが結合して活性化すると小胞体からゴルジ体に移行し、インターフェロンや炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導する。本研究では、STINGの小胞体脱出メカニズムを解明することを目的としている。昨年度は、ゲノムワイドスクリーニングを行い、COPII輸送小胞の被覆タンパク質として知られるSec24CおよびSec23Bの関与を見出した。これらの因子がSTINGと直接結合するか否かを詳細に検討したが、結合は認められなかった。この結果は、リガンド結合したSTINGを認識して小胞体の脱出を促すための別の機構が存在することを示唆した。そこでまず、STINGの小胞体脱出過程における局在変化を調べるため、低温培養によってリガンド結合状態のSTINGを小胞体脱出部位に留め、オルガネラマーカーと共に顕微鏡観察を行った。その結果、STINGはリガンド結合後に古典的な小胞体脱出部位(ER exit site: ERES)とは異なる特殊な領域に濃縮されることが明らかとなった。このSTING小胞体脱出領域を特定するため、APEX2を用いた近接標識プロテオミクスを行ったところ、特定のゴルジ体常在性タンパク質が豊富に存在する領域を同定することに成功した。この遺伝子をノックアウトすると、STINGの小胞体脱出領域における濃縮プロセスが阻害され、ゴルジ体への移行が著しく遅延した。さらに、この分子はリガンド結合したSTINGと特異的に相互作用することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送は、COPIIと呼ばれる輸送小胞を介して行われるモデルが定説となっている。本研究はこのモデルに基づいて実験を計画・推進していたが、STINGはCOPII輸送因子などが集まる通常の小胞体脱出部位を経由せず、特定のゴルジ体常在性タンパク質が豊富に存在する領域に濃縮されることが判明した。このことは小胞体とゴルジ体の接触領域を介した新たな輸送機構の存在を示唆しており、従来の輸送モデルを覆す予想外の結果が得られた。この研究を発展させることにより、STING研究のみならず、タンパク質輸送研究やオルガネラコンタクト研究など他の分野への波及効果が期待できる。現在これらの成果は論文投稿中であり、当初の計画以上の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で新たに発見した小胞体とゴルジ体の接触領域を介したSTINGの輸送機構について、そのモデルの実証を目指す。これを証明するため、3次元電子顕微鏡や超解像顕微鏡を用いてオルガネラコンタクトサイトをナノスケールで詳細に観察する。電子顕微鏡観察では、STINGとAPEX2ペルオキシダーゼ酵素の融合タンパク質発現細胞を用い、STING周辺の小胞体-ゴルジ体接触部位をDAB標識して観察する。また超解像顕微鏡を用いて、STINGと小胞体やゴルジ体の各種オルガネラマーカーを同時イメージングする。
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Causes of Carryover |
本年度に当初計画していなかった予想外の成果を挙げることができたため、次年度はこの成果を発展させるための追加実験を行う必要があり、その費用を次年度に回す必要性が生じた。使用計画としては、電子顕微鏡観察や超解像顕微鏡観察の解析に必要な消耗品費や画像撮影装置の使用料に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)