2021 Fiscal Year Research-status Report
肝臓由来のタンパク質を介した臓器間クロストークに基づく新しい血糖調節機構の解明
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20K07345
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
合田 亘人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00245549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 代償性膵島肥大 / ヘパトカイン / ニューレグリン1 / ErbB3受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常食を投与した膵B細胞特異的ErbB3遺伝子欠損マウス(pErbB3KO)の糖負荷後の耐糖能およびインスリン分泌能を解析したが、野生型マウスと大きな違いは認められなかった。一方、高脂質高糖質食(HFHS)を15週間投与したpErbB3KOマウスは野生型マウスと同程度の体重増加と空腹時血糖値であったが、顕著な耐糖能の悪化とインスリン分泌能の低下を示した。組織学的解析から、pErbB3KOマウスの膵島サイズが野生型マウスと比較して小さく、また細胞増殖マーカーKi67陽性細胞数も少なかった。これらの結果より、pErbB3KOマウスではHFHS投与による代償性膵島肥大が抑制されていることが示された。また、pErbB3KOマウスの随時血糖値は野生型マウスと同程度であったが、血中インスリン量は低下していた。一方、HFHS投与pErbB3KOマウスの肝臓のニューレグリン1遺伝子発現および血中のニューレグリン1量は野生型マウスと同程度であった。以上の結果より、膵B細胞のErbB3受容体が血糖値上昇に対する生体防御機構としての代償性膵島肥大にかかわっていると結論付けた。 ニューレグリン1の切断・分泌機構解析では、質量分析解析より膜貫通ドメインよりN末側の9~14番目のアミノ酸領域が切断される可能性があると考え、その領域のアミノ酸変異体を用いて解析を行い、13番目と14番目のVQ配列が切断に重要であることか明らかになった。また、切断酵素阻害剤を用いた解析から、ADAMおよびMMPに対する広領域阻害剤の添加によってニューレグリン1分泌が濃度依存的に抑制された。しかしながら、ADAM10、BACE1およびNRD1に対する特異的な阻害剤ではその抑制は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症による研究活動はほぼ解除されたものの、コロナ前と比べると物品価格の高騰、物品不足と納品遅延があり一部研究遂行に支障が生じている。しかしながら、当初計画した研究は行えており期待した成果も得られている。一方で、ニューレグリン1遺伝子発現機構の解析は期待した成果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
肝由来分泌因子ニューレグリン1による代償性膵島肥大が膵B細胞のErbB3受容体を介しているかを検証するために、膵B細胞特異的ErbB3遺伝子欠損マウスにニューレグリン1タンパク質を投与することで、膵B細胞特異的ErbB3遺伝子欠損マウスで認められた代償性膵島肥大の抑制減少が改善しないことを証明する。具体的には、経口糖負荷後の耐糖能と組織学的な膵島サイズ計測と増殖マーカー(PCNA、Ki67)の発現を評価する。また、初代培養マウス膵B細胞を用いてニューレグリン1による細胞増殖応答がErbB3受容体を介していることを証明する一方で、ErbB3受容体と2量体形成にかかわるErbB受容体とその下流で働くシグナル経路を解析する。 ニューレグリン1の切断・分泌機構解析では、まずHEK293細胞を用いて得られた膜貫通ドメインよりN末側13と14番目のアミノ酸の重要性を初代培養マウス肝細胞を用いて確認する。また、切断酵素阻害剤を用いた解析からADAMあるいはMMPがニューレグリン1の切断・分泌にかかわっていることが明らかになったので、siRNAを用いてニューレグリン1切断酵素の同定を行う。 以上の結果が得られた後、これらの結果を国内外の学会および欧文論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度は1210円の残金が生じているが、2022年度の助成金と合わせてすべて2022年度中に研究遂行のために使用する
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