2022 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓由来のタンパク質を介した臓器間クロストークに基づく新しい血糖調節機構の解明
Project/Area Number |
20K07345
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
合田 亘人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00245549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / ヘパトカイン / 代償性膵島肥大 / ニューレグリン1 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はさらに、代償性膵島肥大におけるNrg1-ErbB3経路の重要性を検証するために、2型糖尿病を発症したpErbB3KOに対して、大腸菌で作出したNrg1タンパク質を投与した。その結果、耐糖能の改善、膵島サイズの増大および細胞増殖マーカーKi67陽性細胞数の増加は認められなかった。次に、ErbB3と共に膵B細胞増殖にかかわるErbB受容体とその細胞内シグナル経路の探索を行った。ErbB1とErbB2の両方を阻害するラパチニブ処置ではNrg1による膵B細胞増殖が抑制されたが、ErbB1阻害剤ゲフェチニブでは抑制が認められなかった。また、PI3K阻害剤では膵B細胞増殖の抑制は認められない一方で、ERK阻害剤により増殖が抑制されることが分かった。肝細胞におけるNrg1の切断・分泌機構については、広域ADAM・MMP阻害剤のGM6001とバティマスタット、ADAM17に対するsiRNAのそれぞれの処置により、Nrg1の切断・分泌が抑制されることが分かった。しかしながら、HEK293細胞で切断活性を示したADAM10の発現抑制では分泌量に大きな変化は認められなかった。一方、ADAM17以外のどのMMPがNrg1の切断・分泌にかかわっているかについては明確な答えは得られなかった。以上の結果より、肝臓から分泌されるヘパトカインのNrg1が膵B細胞のErbB2/3受容体に結合しMEK-ERKシグナル経路を活性化させることで、2型糖尿病に対する応答機構としての代償性膵島肥大を誘導すると結論づけることに成功した。また、肝臓におけるNrg1の切断・分泌には少なくともADAM17が重要な役割を果たしていることが明らかになった
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