2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K07358
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷 武徳 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40455960)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 腸上皮細胞 / 細胞寿命 / Ras / mTORC1 / Src / CD47 / Wntシグナル / 腸幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
各組織を構成する細胞はそれぞれの種類ごとに固有の寿命をもつことが知られるが、細胞の寿命を決定するメカニズムについてはこれまでほとんど明らかにされていない。そこで研究代表者は、細胞の生涯を比較的観察しやすい腸上皮細胞をモデルとして、細胞外・細胞内の両面から細胞寿命の制御機構に注目した解析を進めている。 本年度は特に、腸上皮細胞の寿命制御における細胞内のRas-MAPKシグナルの役割について明らかにすることを目的として、腸上皮細胞時的なRas活性化マウスを作製し解析を進めた。その結果、腸上皮細胞時的Ras活性化マウスでは腸上皮の肥厚化が小腸・大腸ともに認められると同時に、腸上皮細胞の増殖の亢進、ゴブレット細胞の増加、小腸ではパーネット細胞の減少も認められた。また、腸上皮細胞時的Ras活性化マウスの小腸から作製した腸オルガノイドは、コントロールマウス由来腸オルガノイドに比べ成長の促進や、buddingの増加が認められた。さらに面白いことに、腸上皮細胞でのRasの活性化は幹細胞性の維持に重要なWntシグナルを抑制する可能性も見出した。以上の本年度の研究から、Ras-MAPKシグナルはWntシグナルを抑制することで腸上皮細胞の増殖や分化を制御し、腸上皮細胞の寿命を制御する可能性が明らかとなった。これらの成果については論文発表を行なった。さらに、赤血球の寿命制御シグナルとして機能する可能性が示されている5回膜型分子CD47の腸上皮細胞特異的欠損マウスを用いた解析も進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた研究内容を順調に進めることができ、得られた研究成果を論文および学会で公表することが出来たため。また、更なる研究成果の公表に向けた端緒となる実験結果を現時点で得ているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の所属する研究グループでは、赤血球上に発現する5回膜貫通型分子CD47の減少が赤血球の老化シグナルとして自律的に機能する可能性をこれまでに示しているが(Ishikawa-Sekigami et al., Blood, 2006)、CD47はユビキタスに発現する分子であり腸上皮細胞の寿命制御に寄与している可能性もある。そこで、最近作製した腸上皮細胞特異的CD47ノックアウトマウス(CD47lox/flox・villin-Creマウス)における腸上皮細胞の寿命について解析を行ない、赤血球のときと同様にCD47が腸上皮細胞の寿命を制御するか否かについて明らかにする。
|
Causes of Carryover |
本年度は腸上皮細胞特異的Ras活性化マウスの解析結果を論文発表の形にまとめる必要があったため、計画していたCD47の腸上皮細胞特異的欠損マウスの解析に若干の遅れが生じ、そのため未使用額が生じた。次年度にはCD47の腸上皮細胞特異的欠損マウスの解析を中心に行うことを計画しており、本年度の未使用額はCD47の腸上皮細胞特異的欠損マウスの解析にもちいる試薬、実験器具の購入費用に充てる。
|
Research Products
(5 results)