2020 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスセンサーPERKの活性化によるリン酸化を介したHMGB1の分泌機構
Project/Area Number |
20K07359
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
谷内 秀輔 徳島大学, 先端酵素学研究所, 特任研究員 (80747014)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | PERK / HMGB1 / リン酸化 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養細胞で観察されたLPS投与によるHMGB1分泌がPERKの阻害によって増加するという現象が生体内でも観察されるかを検証するために、Perk KO新生仔マウスにLPSを投与し、血中HMGB1濃度の測定を行った。その結果、Perk KOマウスにおけるLPS投与後の血中HMGB1濃度が、野生型マウスと比較して有意に増加することを見出した。また、Fv2E-PERKシステムによるPERK経路活性化がLPS投与時のHMGB1分泌を抑制することを培養細胞で見出していたことから、PERK活性化剤による敗血症性ショックの低減が可能か否かの検討を進めた。予備実験として、既知のPERK活性化剤(CCT020312)をマウスマクロファージ由来のRAW264.7細胞に投与し、LPS刺激によるHMGB1分泌を抑制するか否かの検討を行った。しかし、PERKとeIF2αのリン酸化が観察された濃度のPERK活性化剤で細胞を長時間処理すると、明らかに細胞死が増加した。この結果はPERK活性化剤単独およびLPSとの同時投与のいずれにおいても観察され、PERK活性化剤自体が強い細胞毒性をもつことが示唆された。そのため、マウスへのPERK活性化剤投与は見送り、細胞毒性の少ない他のPERK活性化剤の探索を検討している。敗血症モデルマウスへのPERK活性化剤投与を中止したため、次年度に行う予定であったHMGB1のリン酸化状態に応じて結合が変化する因子の網羅的解析をmEGFP融合HMGB1リン酸化変異体を用いて行った結果、非リン酸化ミミック変異体において特異的に結合量が増加する3種類のタンパク質を見出した。免疫沈降法により、これらの3種類のタンパク質とHMGB1非リン酸化変異体との相互作用も確認済みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、Perk KO新生仔マウスを用いたLPS投与時のHMGB1血中濃度の測定を行い、培養細胞と同様にPERK欠損がHMGB1分泌を増加させることを明らかにした。一方、PERK活性化剤によるHMGB1分泌抑制の検討は細胞レベルでの予備実験において、予想外に細胞毒性が高かったことから、マウスへの投与は見送った。Perk KOマウスの解析から部分的にではあるが、本研究の目的の一つであるPERKによるHMGB1のリン酸化を介した分泌制御機構が生体内でも存在することを示すことができた。 また、予定を前倒しして行っていたmEGFP融合HMGB1のリン酸化ミミック変異体と非リン酸化ミミック変異体を用いたHMGB1結合タンパク質の同定から、全く予想していなかったタンパク質の結合がHMGB1のリン酸化状態に応じて変化することを見出した。見出した3種類のタンパク質は複合体を形成することが知られているが、 HMGB1との相互作用は今までに報告されておらず、敗血症の病態理解に新たな知見をもたらすと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
PERKによるHMGB1リン酸化が分泌を制御する分子機構を理解するために、HMGB1の非リン酸化変異体との結合を見出した3種類のタンパク質をコードする遺伝子をCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集で破壊したRAW264.7細胞を樹立する。樹立した細胞にLPSを投与し、HMGB1分泌量を測定することで新たに見つけたタンパク質がHMGB1分泌に関与するかを明らかにする。
|