2021 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスセンサーPERKの活性化によるリン酸化を介したHMGB1の分泌機構
Project/Area Number |
20K07359
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
谷内 秀輔 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80747014)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HMGB1 / HMGB2 / リン酸化 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に同定したHMGB1の非リン酸化ミミック変異体と強く結合することが示された3種類のタンパク質が、LPS投与時のHMGB1分泌量に影響を及ぼすか否かを検証するため、本年度はCRISPR/Cas9システムを用いてRAW264.7細胞において当該遺伝子の破壊を試みた。 3種類の遺伝子のうち、1種類の遺伝子についてはゲノム編集効率が比較的高い細胞プールが得られたため、細胞のクローン化を試みた。クローン化した細胞のゲノムDNAのシークエンス解析を行ったが、フレームシフト変異が全てのアリルに導入された完全なノックアウト細胞は得られなかった。しかし、ウエスタンブロット法で解析を行ったところ、標的遺伝子のタンパク質発現が野生型の細胞と比較して60~70%減少していた。完全なノックアウト細胞が得られなかった理由としては、当該遺伝子が細胞の生存に必須であるためと推察された。興味深いことに、ゲノム編集の標的遺伝子のタンパク質発現が減少していた細胞では、HMGB1の非リン酸化ミミック変異体と結合することが示された他のタンパク質の発現も減少させていた。 現在、樹立したクローン細胞を用いてLPS投与時のHMGB1の分泌に対する当該遺伝子の影響の解析を進めている。また、データベースを用いた解析から、HMGB2もHMGB1と同様に前年度に同定した3種類のタンパク質と相互作用することが明らかになっているため、HMGB2の分泌についても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度から現所属に異動したが、新規に立ち上がった研究室であるため、新型コロナウイルス流行に伴う移動制限などで研究機器の輸送等がなかなか進まず、研究環境が整うまでに時間がかかり、HMGB1やHMGB2の分泌量の定量化までは終了しなかった。そのため、やや遅れているを選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症時にPERKがHMGB1とHMGB2の分泌を制御する分子機構をより理解するために、HMGB1の非リン酸化ミミックと結合するタンパク質の遺伝子をゲノム編集で破壊したRAW264.7細胞を用いてLPS投与時のHMGB1とHMGB2の分泌量を定量化する。また、樹立したゲノム編集細胞やPERK経路を活性化した細胞におけるHMGB1の細胞内局在を調べると共に、分泌性リソソームや細胞外小胞といった既知のHMGB1分泌機構との関係を明らかにするため、リソソームマーカーのLAMP1や細胞外分泌小胞マーカーとの細胞内共局在についても解析を進める。以上の解析から、敗血症モデルにおいてPERKがHMGB1の分泌をどのように制御するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
現所属に異動してから科研費が使用できるようになったのが8月以降であったために、当初の予定よりも使用金額が少なくなった。生じた次年度使用額は、新しい研究環境でまだ購入していないPERK阻害剤やLPS等の必要な薬剤や抗体の購入、学会発表のための旅費等に使用する予定である。
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