2020 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア分子CHCHD2の疾患特異的変異体の性状解析
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20K07361
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
孟 紅蕊 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤助教 (90736498)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CHCHD2 / 筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン病 / ミトコンドリア / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経細胞内に異常タンパク質の封入体が認められる神経変性疾患である。封入体の主要な構成タンパク質や変性する神経細胞は、それぞれ中脳黒質ドパミン神経(PD)、上位・下位運動神経(ALS)と異なっており、それが病態・臨床症状の違いを招く。一方、共に神経のミトコンドリアに変性が生じるなど、病態に共通性も認められる。申請者らは、晩発性PD原因遺伝子であるCHCHD2を同定し、本分子がミトコンドリア呼吸鎖の電子伝達の安定化に関与することを明らかにしている。さらに、ALSにおいてCHCHD2の変異(ALSバリアント)を見出した。本研究では、CHCHD2のPD変異とALS変異の性質の違いを明らかにし、神経細胞種特異的な病態機序の解明を目指す。 本年度は、ショウジョウバエのミトコンドリアの形態異常の観察、局在化の変化、GCaMP6f(神経終末細胞質のCa2+のバイオセンサー)とmito-GCaMP6s(ミトコンドリアCa2+のバイオセンサー)による神経終末のCa2+イメージングをPD変異とALS変異との比較をしつつ実施した。ALS変異はPD変異体に比して、若い段階からミトコンドリア局在が不安定化した。一方、ミトコンドリア形態については、いずれの変異体も断片化傾向にあった。次ぎに、ショウジョウバエPAM神経核ドーパミン神経の神経終末を電気刺激し、Ca2+の動態をモニターした。その結果、PD変異では刺激後の細胞質Ca2+のピーク濃度が高くなることを観察した。さらに、ALS変異ではその傾向が顕著であった。細胞質で増加したCa2+は一部がミトコンドリアに取り込まれる。そのCa2+動態は、ALS変異で顕著に低下していた。PD変異では取り込みが見られるものの、そのタイミングが野生型に較べて遅れる傾向にあった。これらの結果から、Ca2+動態の違いが、運動神経の脆弱性に繋がることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Ca2+のイメージングに注力して進めた。その結果、ALS変異とPD変異での顕著な差異を見出すことができ、計画を達成できたと判断した。一方、mitoTimerについては、CHCHD2にC末端に融合すると核への異所性の局在を示すことがわかり、ミトコンドリア輸送効率をみる実験はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ALS病理で見られるRNA結合タンパク質TPD-43の封入体は、CHCHD2 ALS患者病理においても観察されている。ハエは内在性のTDP-43を有し過剰発現により強い神経毒性をもつ。CHCHD2のPD変異体、ALS変異体とTDP-43との遺伝的相互作用、免疫染色による内在性TDP-43の凝集性の有無を、ドパミン神経・運動神経細胞体で観察する予定である。 またCHCHD10との相互作用解析を、培養細胞を用いて進める。CHCHD2とCHCHD10は、培養細胞においてガラクトース培地でミトコンドリア呼吸を強制的に活性化させると複合体サイズが変化することから、ALS変異とPD変異が、高分子複合体の変化へ与える影響、ヘテロ、ホモ二量体形成へ与える影響を、培養細胞から抽出したミトコンドリア粗分画を用いたBlue-native PAGEで解析する。
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Causes of Carryover |
ショウジョウバエの飼育、実験補佐をする技術補佐員の採用が進まなかった。またCOVID-19の広がりにより学会参加を見送った。R3年度は技術補佐員の採用が決まり、実験のスピードアップが期待できる。
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[Presentation] Analyses of CHCHD2 pathophysiology by human brain, iPSC and Drosophila model2020
Author(s)
Aya Ikeda, Hongrui Meng2 , Kenya Nishioka, Masashi Takanashi, Yuanzhe Li, Hiroyo Yoshino, Tsuyoshi Inoshita, Kahori Shiba-Fukushima, Akio Mori, Risa Nonaka, Nana Izawa, Keiichi Ishikawa, Hidemoto Saiki, Masayo Morita, Manabu Funayama, Masato Hasegawa, Hideyuki Okano, Wado Akamatsu, Yuzuru Imai, Nobutaka Hattori
Organizer
第61回日本神経学会学術大会
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