2020 Fiscal Year Research-status Report
Liver pathology of immune-related adverse events
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20K07369
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
原田 憲一 金沢大学, 医学系, 教授 (30283112)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害薬 / 肝障害 / 病理 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、全身諸臓器のがん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬治療の普及にともない、従来からの薬物性肝障害とはまったく異なる病態で、免疫関連有害事象(irAE)と称される肝障害が増えつつある。しかし、その病態および病理像は未だ不明であり、診断基準も策定されておらず、実臨床の場では混乱を招いている。今回、厚労省の難治性疾患等政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する研究」班で行われるirAE関連肝障害の全国調査と同時に、患者症例の肝生検検体も収集し、HE染色との形態的観察および免疫担当細胞の免疫組織学的検討によりirAE関連肝障害の組織学的特徴および免疫関連現象の解明を行う。同時に臨床的鑑別疾患として重要な自己免疫性肝炎、薬物性肝障害の症例も同時に収集および解析を行い、病理診断の際における重要な形態的および免疫染色の所見について明らかにする。さらに前向きにも検体を収集し、包括的1細胞遺伝子解析法を用いた肝内細胞社会の解析を行うことにより、irAE関連肝障害において発生している複雑な免疫応答および病態を明らかにする。これらの病理学的解析にて得られたirAEの病理学的知見と臨床情報(免疫チェックポイント阻害薬の種類, がん臓器と組織像, 肝機能データ, 画像所見)を加味し、irAE関連肝疾患の病態を臨床病理学的に整理し、最終的には治療介入の是非に寄与できる臨床病理学的診断基準の策定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
irAE関連肝障害の肝生検検体を前方視的および後視的に症例収集しつつある。現在まで、金沢大学附属病院を主とした北陸の病院から8例、また厚労省の難治性疾患等政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する研究」班による全国調査と同時に協力いただいた20例を収集している。また、対照疾患として自己免疫性肝炎(AIH), 原発性胆汁性胆管炎(PBC), 薬物性肝障害を自施設を中心に計30例以上を収集しえた。これらの肝組織標本を対象に、組織学的解析をHE染色, 線維染色, オルセイン染色にて施行し、肝細胞障害(小葉炎)と胆管障害(胆管炎)を中心に観察評価し、肝炎型, 胆管炎型, 混合型等のパターン分類した。また、CD4,CD8,MDM1などのリンパ球マーカー、またある種の蛋白(候補分子X)に対する免疫組織化学的検討を行い、薬物性肝障害, AIHやPBCとの異同について検討し、irAE関連肝障害の組織学的多様性と特徴的な所見について病理診断の観点から明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫チェックポイント阻害薬治療の使用拡大に伴いirAE関連肝障害の症例も増えつつあり、本病態の肝生検検体は今後も順調に入手できると推測している。さらなる免疫組織化学的検討として、 MHC class I, MHC class II等の免疫関連分子、樹状細胞 (CD21, BDCA-2陽性Plasmacytoid型, BDCA-1陽性Myeloid型, Langerin陽性Langerhans型)、T細胞(CD8陽性細胞障害性, CD4陽性ヘルパー, FoxP3陽性regulatory)、B細胞(CD20), 組織球(CD68陽性1型, CD163, CD204, AIM陽性2型)との2重染色によりチェックポイント関連分子の発現細胞種について同定する。また、組織障害機序の解析として、ストレスマーカー(8OH-dG等), 細胞死(TUNEL, ssDNA), 細胞増殖(Ki67, PCNA), 胆管障害マーカー(候補分子X)について検討し、壊死炎症性変化部におけるエフェクター細胞の種類と細胞数の程度, 細胞性免疫および液性免疫の観点からの組織発生に加え、非障害部における肝細胞および胆管細胞の細胞動態について修復再生機序の観点からも検討し、治療介入の妥当性の連関について考察する。なお、これらの免疫組織化学的染色に適応可能な抗体は市販されており、病理学的解析は可能と考えている。
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Causes of Carryover |
端数のため次年度の予算と合わせて使用いたします。
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