2020 Fiscal Year Research-status Report
CD30によるゲノム不安定性の誘導と腫瘍化機構のHTLV-1感染細胞における解析
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20K07379
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
堀江 良一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80229228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 真理子 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (90270701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HTLV-1 / ATL / CD30 / ゲノム異常 / 腫瘍化 |
Outline of Annual Research Achievements |
CD30は腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)ファミリーに属し、活性化に応じてリンパ球の膜表面に発現が誘導される。CD30はHTLV-1感染細胞の一部に誘導され、これらの細胞は病態の進行とともに増加する。HTLV-1感染細胞株に発現しているCD30をリガンドCD30Lで刺激すると、フラワー細胞と呼ばれる多分葉した核、さらに多倍体染色体の形成を示した。形態のタイムラプス顕微鏡による検討では、細胞が分裂を終了する直前で分裂をキャンセルするという形の細胞分裂の異常を伴っていることが示された。一方、HTLV-1非感染細胞株に発現しているCD30のCD30Lによる刺激での検討では、多分葉した核、多倍体染色体の形成、細胞分裂の異常は明らかではなかった。これらの結果は、CD30がHTLV-1感染という特殊な細胞内環境においては、多分葉した核や多倍体染色体の形成、細胞分裂の異常を起こすことを示唆している。HTLV-1感染細胞株に発現しているCD30をCD30Lで刺激するとphosphoinositide 3-kinase(PI3K)のリン酸化を誘導した。さらに、HTLV-1感染細胞株をprotein kinase C(PKC)の活性化剤であるphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)で刺激すると、CD30を介したシグナルと類似した核の多分葉化と多核の細胞が出現した。これらのことから、HTLV-1感染細胞株でのCD30による多分葉した核や多核の細胞の誘導には、PI3K-PKC経路が関与していることが示唆された。以上の結果は、CD30の発現誘導とそれに伴うCD30を介した細胞内シグナルがHTLV-1感染細胞における染色体異常を誘発、感染細胞の増殖促進やHTLV-1感染者の病期の進展と関連している可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言により、使用している医学部 DNA 実験センター P2施設が2ヶ月間の閉鎖となり、研究遂行が困難な時期があり全体としてやや遅れている。比較染色体解析(CGH+SNP)とエキソームシークエンス解析は次年度に引き続き実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の検討で、HTLV-1感染細胞ではCD30シグナルにより多分葉した核や多核の細胞が誘導され、これにはPI3K-PKC経路が関与していることが示唆された。これらの結果は、HTLV-1感染細胞におけるCD30の発現誘導は染色体異常を誘発、感染細胞の増殖促進やキャリアの病期の進展と関連していることを示唆していると考えられた。 今後はCD30シグナルがHTLV-1感染細胞に起こすゲノム異常を明らかにしていく。具体的には、HTLV-1感染細胞株に発現しているCD30をCD30Lで刺激、ゲノムを抽出してCD30がHTLV-1感染細胞に起こすゲノム異常を比較染色体解析(GH+SNP)とエキソームシークエンス解析により明らかにする。さらにRNAを抽出、マイクロアレイを用いて遺伝子発現を解析し、CD30により誘発される遺伝子発現の変化を明らかにする。ゲノム異常とシグナル異常との関係についてコンピュータ解析を行い、CD30シグナルの腫瘍化への関与を明らかにする。すなわち(1)細胞分裂異常の解析、(2)ゲノム異常の網羅的解析、(3)遺伝子発現の変化の解析を行い、CD30が誘発するゲノム不安定化とHTLV-1感染者の病態への影響を解明をする。 今年度も新型コロナウイルス感染症に伴う種々の制約が生じる可能性はあるが、実験計画については柔軟な対応を行い、予定している実験が遂行できるように努力する。
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Causes of Carryover |
今年度は、前年度最終年度の科研費の成果論文のリバイズが長引き、本研究課題の開始に影響した。さらに、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言による、医学部 DNA 実験センター P2施設の2ヶ月間の閉鎖などで研究遂行が困難な時期があり、全体として研究遂行がやや遅れたために未使用額が生じた。今年度は遅れた分を含めて実験を計画しており、予算使用上の問題は生じないと考えられる。
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[Journal Article] Impact of Anti-GPIIb/IIIa antibody-producing B cells as a predictor of the response to lusutrombopag in thrombocytopenic patients with liver disease.2020
Author(s)
Wada N, Uojima H, Satoh T, Okina S, Iwasaki S, Shao X, Takiguchi H, Arase Y, Itokawa N, Atsukawa M, Miyazaki K, Hidaka H, Kako M, Kagawa T, Iwakiri K, Horie R, Suzuki T, Koizumi W.
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Journal Title
Dig Dis.
Volume: Aug 6
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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