2020 Fiscal Year Research-status Report
中皮間葉転換を起点とする播種微小環境形成メカニズムの臓器横断的解明
Project/Area Number |
20K07380
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
菊地 良直 帝京大学, 医学部, 講師 (90512260)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 中皮間葉転換 / ペリオスチン / 癌関連線維芽細胞 / 播種 / 癌微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種担癌組織において中皮間葉転換の誘導が存在するかを確認するため、腫瘍が漿膜近傍まで浸潤した組織あるいは漿膜面に露出した病理組織材料を用いて、中皮細胞マーカーのカルレチニンおよび癌関連線維芽細胞のマーカーであるαSMAを用いて免疫組織化学的検討を行った。肺腺癌組織では、肺原発巣の胸膜浸潤部では中皮間葉転換は乏しく、肺腺癌の壁側胸膜播種巣では顕著な中皮間葉転換が観察された。消化器癌では、大腸腺癌では腫瘍が漿膜面に露出した腫瘍において中皮間葉転換が観察されるが、胃癌では腫瘍が漿膜面に露出した症例においても中皮間葉転換の誘導は乏しいという結果が得られた。胸腔では臓側胸膜と壁側胸膜で、腹腔では胃漿膜と大腸漿膜あるいは後腹膜において、中皮間葉転換の起こりやすさに違いがある可能性が示唆された。 癌間質の癌関連線維芽細胞が発現する分泌タンパクの一つであるペリオスチンに関して、中皮間葉転換との関連性を検討した。肺癌手術時胸腔洗浄液細胞診材料の遠心後上清中におけるペリオスチン含有量をELISA法によって計測すると、細胞診断上胸腔洗浄液中に癌細胞が存在する群において、ペリオスチンの含有量が有意に高いという結果が得られた。また、肺腺癌の壁側胸膜播種巣におけるペリオスチン発現の免疫組織化学的検討で、中皮間葉転換がみられる癌間質組織にペリオスチンの過剰発現が認められた。そこで、ペリオスチンの中皮間葉転換誘導作用を調べるため、ペリオスチンを中皮細胞株(Met5A)に作用させる実験を行った。ペリオスチンの作用によりMet5Aの増殖活性は亢進した。同様の結果は、ヒトリンパ管内皮細胞株を用いた実験においても確認された。今後は各種中皮間葉転換マーカーの発現に関して詳細に検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては共同研究で、各種癌手術時の胸腔洗浄液、腹腔洗浄液および悪性胸水や悪性腹水を用いて液体中に含まれるエクソソーム内因子を検討する予定であるが、サンプル収集の開始が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
中皮間葉転換を誘導する因子として、microRNAの一種であるmiR-21や分泌タンパクの一種であるペリオスチンに着目している。特に播種微小環境において、エクソソーム内に含まれるmiR-21やペリオスチンの機能解析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
エクソソーム内因子の検討のため、初年度より各種液体サンプルからのエクソソーム抽出を行う予定であったが、初年度はサンプル収集が開始できなかったためこれに使用予定であった費用を使用しなかった。次年度に予定通りエクソソーム抽出を開始予定である。
|