2020 Fiscal Year Research-status Report
タイト結合のジスルフィド結合を介した機能調節:酸化還元シグナルの入り口として
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20K07402
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 敏 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (30374250)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タイト結合 / occludin / ジスルフィド結合 / redox / thioredoxin |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はoccludinに含まれる7か所のシステイン(Cys)のうち、膜貫通部分にあるCys76、Cys82、Cys148についてoccludin-FLAGの野生型やCys変異型をAMOC2細胞株やHEK293T細胞株に発現させて、occludin-FLAGのジスルフィド結合(S-S結合)の有無、occludin同士の相互作用を検討した。 SH基修飾試薬を用いた検討では、Cys76、Cys82、Cys148のいずれにも修飾反応がなく、これらのCysは安定したS-S結合を持つことが分かった。さらにこれらのCysのうち2か所を同時に変異させてもSH基修飾反応がなく、これらのCysは分子間でS-S結合を形成することが示された。また、2か所、もしくは3か所すべてのCysを変異させても、変異型occludinの発現量に変化は見られなかった。 共免疫沈降によるoccludin同士の相互作用では、Cys76、Cys82、Cys148のすべてを変異させた変異型occludinでは、occludinの沈降量が有意に多くなり、occludin同士の相互作用が増大していると考えられた。この相互作用の増大は、変異型-変異型だけでなく、変異型-野生型の相互作用にも認められた。さらに、この相互作用増大は3か所のCysを全て変異させた場合のみに認められた。また、共免疫沈降されるoccludinは分子量が大きくなっており、リン酸化やユビキチン化等の二次修飾されたoccludinによる強い相互作用を示していた。これらの結果はAMOC2とHEK293Tでは差異があり、タイト結合の状態などの因子の影響が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに変異型occludin発現ベクターを構築し、各々のCysについてジスルフィド結合の有無を確認できた。それに伴い、ジスルフィド結合がoccludinの相互作用や細胞内シグナルに何らかの影響を及ぼす可能性が見いだされた。ただし、occludinの細胞内分布や二次修飾、に関する検討がやや遅れている。以上を総合すると、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、他の細胞株での再現性、他の種類の変異型occludinとの相互作用の確認を行う予定である。また、Cys76、Cys82、Cys148の変異によるoccludin細胞内分布変化の検討を行う予定である。 二次修飾の検討は、リン酸化やユビキチン化について、occludin発現ベクターの変異を利用して行う予定である。 さらに、細胞増殖の変化を、in vitroで検討する。細胞増殖の変化が確認出来たら、細胞内シグナル経路の発現量変化を検討する。 これらの検討を酸化ストレス下や低酸素状態下でも行い、野生型との比較を行い、occludinのS-S結合の機能解明を目指す。
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