2021 Fiscal Year Research-status Report
胆嚢癌におけるCD1a陽性樹状細胞の免疫応答メカニズムと直接相互作用機序の解明
Project/Area Number |
20K07408
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
甲斐 敬太 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60516540)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
田中 智和 佐賀大学, 医学部, 助教 (60781903)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 胆嚢癌 / 樹状細胞 / CD1a / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度にPMBCより樹状細胞を分化させる実験系を確立した。2021年度はその実験系を用いて、胆嚢癌細胞株と樹状細胞のインサート共培養を行い、様々な知見を得ることができた。 2種類の胆嚢癌細胞株(NOZ、TGBC)に分化させたCD1a陽性樹状細胞を共培養し、癌細胞の増殖能・浸潤能が変化するかを検討したが、いずれの細胞株においても癌細胞の増殖能・浸潤能に変化はみられなかった。予測された結果ではあったが、癌の制御に樹状細胞が直接的に関与するわけではなく、樹状細胞が誘導する細胞障害性Tリンパ球(CTL)が重要であることを再確認する形となった。 逆に、癌細胞が単球の分化に与える影響を検証してみたところ、サイトカインの添加がない状態でTGBCと単球を共培養しても樹状細胞への分化は認められなかったが、NOZと共培養を行ったところ、樹状細胞への分化が認められた。癌細胞のクローンによっては樹状細胞を分化させるポテンシャルを有することが示唆された。今後、検証実験を行っていく。 一方、樹状細胞の分化に必要なサイトカインを添加して共培養すると、いずれの細胞株でも樹状細胞への分化が認められたが、培養7日目から、多核巨細胞が誘導されるという現象が観察された。多核巨細胞の誘導機序は未解明であるが、この現象は再現性があった。実際の癌組織でも、多核巨細胞の浸潤がみられることがあり、リンパ節でもサルコイド様反応を時に経験する。多核巨細胞が癌組織で果たす役割は不明であり、今後掘り下げて研究を行う価値のある現象と考えている。 また、これまで胆嚢癌(腺癌)を対象に樹状細胞の研究を行ってきたが、扁平上皮癌組織における樹状細胞の役割を解明することも重要と考え、喉頭癌(扁平上皮癌)組織における樹状細胞に関して解析を行ったところ、有意な結果が得られたので英文論文として報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初期段階では、コロナパンデミックの影響で試薬がなかなか納入されず、研究のスタートアップに時間を要したが、研究試薬が揃ってからは、順調にデータを出せている。樹状細胞の癌細胞に対する直接効果に関する研究に関しては、当初に想定した結果は得られなかったが、樹状細胞の分化に関しては興味深い結果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、液状化細胞診の技術を応用し、樹状細胞の分化に関する形態評価を再度行う。さらに同様に液状化細胞診検体の技術を応用して免疫染色による解析も追加する。これまで得られた膨大な培養データの整理を行って、論文化の道筋をつける。また、多核巨細胞の誘導メカニズムと癌組織における役割に焦点をあて、サイトカイン分泌量の変化などの解析を行う。扁平上皮癌を対象とした研究展開も模索する。
|
Causes of Carryover |
大学から研究費の配分があったので、そちらの研究費を用いて研究を遂行した点と、コロナパンデミックの影響で、学会出張等の旅費の出費がなかった点から、次年度使用額が発生した。今後、予定通りに研究を遂行し、必要な研究費を適切に使用していく。
|