2020 Fiscal Year Research-status Report
膵がんの線維形成性間質不均一の臨床病理学的意義およびその形状に係る分子機構の解明
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20K07414
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
眞杉 洋平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90528598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵がん / 腫瘍微小環境 / 免疫療法 / 腫瘍免疫 / 間質療法 / 腫瘍内不均一 / 画像解析 / 免疫抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵がん組織には、腫瘍細胞の数倍もの間質成分が混在し、それらは互いに密接に関わりつつがんの進展に寄与する。近年、膵がん腫瘍間質包括的に標的とした新規治療戦略の開発が試みられ、成果を上げつつある。本研究は、膵がん線維性間質不均一の特徴化ならびに臨床病理学的意義の解明(目的1)、膵がん線維芽細胞不均一を形状する分子機構の解明(目的2)、の2項目を達成し、膵がんに対する間質療法の実用化・個別化への展開の道標となる成果を創出する。本年度、次の研究成果を得た。 まず膵がん組織切片を用いた多重蛍光染色を行い、ACTA2ならびにFAPの発現レベルにより相互排他的に認識される2種類の線維芽細胞サブタイプを見出し、それらがヒト膵がんにおける主要な間質細胞であることを見出した。次に、組織内局在を保ったまま、これら線維芽細胞サブタイプならびにコラーゲン量をピクセル単位で測定することを可能にした組織イメージング定量システムを開発した。この新規技術を用いることで、詳細な臨床情報・分子病理学的情報の付与された患者検体215例の未治療膵がんの全切除切片について、がん間質の組成を測定した。次いで、間質組成により膵がん間質を①collagen-rich type ②FAP-dominant-fibroblast-rich type ③ACTA2-dominant-fibroblast-rich typeの3つに分類すると、患者予後はきれいに層別化されることを示した。さらに、各々の間質タイプを有する膵がんは、がん細胞の分子学的性格(トランスクリプトームに基づく分子サブタイプ・SMAD4遺伝子異常)や免疫抑制活性が有意に異なることが示された。ヒト臨床検体を用いた客観的かつ再現性の高い解析を基盤とするこれら一連の研究成果を、原著論文として報告した(Clin Caner Res 2021; 表紙に採用)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、(目的1)の細目の内、1-1) 腫瘍内の異なる性格をもつ線維芽細胞サブタイプの同定・自動分別法の確立、1-2) 腫瘍内線維芽細胞サブタイプと免疫細胞の空間分布解析、1-3) 患者間で異なる間質タイプによる膵がん悪性度診断、を達成し、さらにその研究成果を原著論文として報告した。研究は当初の計画よりも順調に進んでおり、さらに発展的な成果も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を進める中で、ある線維芽細胞サブタイプに特徴的に発現する転写調節因子Xを発見した。さらに、膵がんの病理組織の観察において、ある線維芽細胞サブタイプが、特定の形質をもつ、あるいは分子Yを発現する腫瘍細胞と空間的に密な相互関係にあることを見出している。これらの所見に基づき、1-2) 腫瘍内線維芽細胞サブタイプとがん細胞の空間分布解析、目的2の細目の内、2-1) 膵がん組織内線維芽細胞サブタイプで活性が異なる分子経路の同定、を中心に研究を進める。これらを達成することにより、2-2) 線維芽細胞の2方向分化を制御する分子機構の解明、膵がん間質反応モデルの確立、に向けた研究の方向性をより明確にしたい。
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Causes of Carryover |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。次年度使用額として8,685円を繰り越すが、次年度予算と合わせて試薬等の消耗品費として使用する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Three Distinct Stroma Types in Human Pancreatic Cancer Identified by Image Analysis of Fibroblast Subpopulations and Collagen.2021
Author(s)
Ogawa Y., Masugi Y., Abe T., Yamazaki K., Ueno A., Fujii-Nishimura Y., Hori S., Yagi H., Abe Y., Kitago M., Sakamoto M.
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Journal Title
Clin Cancer Res
Volume: 27
Pages: 107-119
DOI
Peer Reviewed
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