2020 Fiscal Year Research-status Report
変異型KRASによる腫瘍化を抑えるがん抑制遺伝子の同定(膵臓がんへの関与)
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20K07436
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
佐藤 郁郎 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), ティッシュバンクセンター, 部長 (50225918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 礼 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 部長 (10196462)
山下 洋二 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (30420045)
加藤 浩之 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 共同研究員 (90770347)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵がん / Kras |
Outline of Annual Research Achievements |
KRAS遺伝子変異は様々ながんに見出されているが、変異型KRASを標的とする治療開発は困難を極めている。我々は、変異型RASの下流のシグナルを調節することで腫瘍化を抑えることができるのではと考え、セリンスレオニンホスファターゼを標的とした治療開発のための基礎研究を開始した。その経緯で、PP6ホスファターゼ(PP6)が変異型KRASの腫瘍形成能を抑える機能をもつことを、マウス皮膚発がん実験で明らかにした。
マウスの皮膚発がん実験は、基礎的な研究としては意味を持つが、皮膚においては必ずしもRAS変異は高い頻度では同定されていない。臨床の場で、KRASの変異が特に意味を持つのは、膵臓がん、肺がん、大腸がんである。本研究では膵臓がんに注目した。膵臓がんは90%以上がKRAS変異をもつ難治がんである。もし、PP6が膵臓がんにおいて、変異型KRAS依存性の腫瘍形成を抑えることができれば、PP6を利用した治療法開発の可能性があると考えた。現在までのところ、マウス発がん実験において、KRAS変異を持つ膵臓にPP6を欠損させると、前がん病変の発生が促進されるというデータを得ている。したがって、PP6にはKRAS変異を抑える働きをもつことが示唆された。しかし、まだ膵がん発生には至っていない。さらに長期観察や、p53の変異を導入することで、KRAS変異に加えてp53との関係を含め、PP6による膵がん発生の抑制メカニズムを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の開発したPpp6cF/Fマウスと、Pdx1-CreERTマウス、Kras LSL-G12D/+マウス(Jackson 研)、およびp53 F/Fマウス(Jackson 研)を掛け合わせて以下のマウスを作製した。遺伝子発現・欠損の誘導剤としてタモキシフェン(TAM)を用いる。 K6cマウス (膵特異的に、変異型KRAS+Ppp6c欠損となるマウス) として、以下の3種類のマウスを作成した。(1)変異型KRAS+Ppp6cホモ欠損:Pdx1-CreERT2: KRAS LSL-G12D/+:Ppp6cF/F、(2)変異型KRAS+Ppp6cヘテロ欠損:Pdx1-CreERT2+KRAS LSL-G12D/++Ppp6cF/+、(3)変異型KRAS+Ppp6c正常:Pdx1-CreERT2+KRAS LSL-G12D/++Ppp6c+/+ KP6cマウス (膵特異的に、変異型KRAS+p53欠損+Ppp6c欠損となるマウス) として以下の3種類のマウスを作成した。(4)変異型KRAS+p53欠損+Ppp6cホモ欠損:(1)+p53 F/F、(5)変異型KRAS+p53欠損+Ppp6cヘテロ欠損:(2)+p53 F/F、(6)変異型KRAS+p53欠損+Ppp6c正常:(3)+p53 F/F これまで、K6cマウスに関しては、ほぼ実験が終了している。Ppp6cホモ欠損では、TAM処理後6ヶ月で、膵臓の半分以上が前癌病変PanIN1と2で占められた。さらに、TAM処理後12ヶ月で、ほとんどの組織が前がん病変となり、上皮内がんが発生した。一方で、Ppp6c正常マウスでは病変は微細であった。現在は、KP6cマウスを用いた実験が現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
KP6cに関しても、乳汁を通してTAM処理を行った。その結果僅か3ヶ月で、Ppp6cホモ欠損では、すべてのマウスにおいて膵がんが発生した。それに伴い、体重減少、歩行困難、骨格筋の減少などが起こり、つよく悪疫質の発症が疑われた。今後は、腫瘍組織内の遺伝子発現および代謝産物の解析をおこなう、また血清中のサイトカインの量、筋肉組織における遺伝子発現を解析することで、悪疫質の発生メカニズムを探る。
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Causes of Carryover |
次年度は、メタボローム解析(約100万円)を予定しており、前年度の研究費の一部を合算して用いる
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