2020 Fiscal Year Research-status Report
AhRによる腫瘍抑制作用とその欠損マウスにおける腫瘍形成メカニズムの解析
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20K07437
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
生田 統悟 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 研究員 (00262072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, 上席研究員(定常) (70280740)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸がん / 盲腸 / 炎症 / 腫瘍形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 腫瘍形成に至る個体・組織レベルの経時間変化 AhR-/- マウス(AhRKO)の盲腸に生じる腫瘍の初期段階の性質を調べる目的で、以下の実験を行った。AhRKO(雄、n=11)およびAhR+/-マウス(雄、n=8)の体重変化を比較した。3-7ヶ月齢ではAhRKO個体の体重は有意に低く、AhRKOに特徴的な脱肛は、3, 4ヶ月齢で18% (11匹中2匹)、5, 6ヶ月齢で55% (6/11)、7ヶ月齢では73% (8/11)であった。さらに組織の微細形態を調べるため、盲腸をメチレンブルー染色し、実体顕微鏡で観察した。8週齢の回盲部では、クリプトの配列等に異常がみられた。組織切片のHE染色から、回腸に連続する盲腸では伸長したクリプトがみられ、この領域の細胞増殖の亢進が示唆された。酸化ストレスマーカーとして、DNA損傷に関連する8-OHdG とγH2AX の抗体を使って、盲腸腫瘍を免疫染色した。EpCAM陽性細胞の中に、これらの抗体で染色される細胞がみられたことから、酸化ストレスの亢進が示唆された。さらにin vivo imagingで組織の活性酸素を検出する方法を検討し、L-012の腹腔投与による脱肛部の化学発光を検出した。 2 DNA損傷と腫瘍形成 マウス腸でDNA損傷を検出するための実験系を作成した。野生型C57BLマウスに100ug bleomycin を腹腔投与し、1-48時間後に回腸、盲腸、大腸を採取した。DNA二本鎖切断のマーカーであるγH2AXをimmunoblot および免疫染色で、アポトーシスをTUNEL法および活性型caspase 3の免疫染色で調べた。いずれの組織でも、γH2AXは1-2時間後に、またアポトーシスは6時間後にピークを示した。さらにvillin-cre導入マウスとXrcc6-floxマウスを交配させ、Ku70 cKO マウスを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験材料に用いるAhR-/-マウスの繁殖が予想以上に悪く、腫瘍形成に至る個体や組織レベルの変化の検討が遅れている。また購入したLgr5-EGFPマウスの検疫に時間を要し、このマウスの繁殖もまだ着手したばかりであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
1 腫瘍形成に至る個体・組織レベルの経時変化: 腫瘍形成過程で活性化されるシグナル分子や酸化ストレスマーカー等の因子をwhole mount 免疫染色などの方法で解析し、腫瘍発生部位との位置関係を把握する。
2 部位別遺伝子発現の特徴: AhRKOマウスで腫瘍形成がみられる回盲部の遺伝子発現変化を経時的に解析する。
3 腸上皮幹細胞に生じる変化: Lgr5-EGFP導入マウスとAhR変異マウスを交配させ、腫瘍形成の有無を調べる。形成されるようなら、腫瘍内GFP陽性細胞の分取およびオルガノイド培養を試行し、Lgr5-EGFP/AhR+/+ 細胞との性質を比較する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染により、リモートワークが増えて出勤できずに実験できない日が続いたため。次年度計画としては、主に実験動物を用いた免疫染色をおこなうための抗体や試薬を購入するために使用する予定である。
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