2021 Fiscal Year Research-status Report
AhRによる腫瘍抑制作用とその欠損マウスにおける腫瘍形成メカニズムの解析
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20K07437
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
生田 統悟 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 研究員 (00262072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, 上席研究員(定常) (70280740)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸がん / ileocecal junction / Ah receptor / antimicrobial peptide / tumorigenesis / Lgr5 / Reg3 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 腫瘍形成に至る組織レベルの変化: 組織をメチレンブルーで染色したのち、実体顕微鏡で観察した。回腸では指状絨毛が、盲腸では開口するクリプトが円環状に規則的に配列された。一方で回腸ー盲腸連結部では、絨毛は葉状または尾根状で、配列の規則性は失われていた。盲腸にも不規則な配列がみられた。この形態の違いや不規則性は、AhR+/-マウスに比べて腫瘍形成前のAhRKOマウスで顕著に観察された。15週齢AhRKOマウス回盲部のHE染色から、回腸ー盲腸連結部位の腫瘍形成が明示された。 2 部位別遺伝子発現の特徴: 腫瘍形成に関与する因子を解析するため、AhR-/-マウスを用いて以下の実験をおこなった。腫瘍形成前(14w)のマウスA、および腫瘍を形成した(17w)マウスBを材料とし、回腸ー盲腸連結部(T)およびその近傍(N)の盲腸組織からRNAを抽出し、各組織に発現する遺伝子をDNAマイクロアレイにより解析した。1)マウスAのT/N、2)マウスB のT/N, 3)マウスB-T/マウスA-T の3通りの比較をおこなった。1)では、Tにおけるantimicrobial peptide(AMP)の高発現がみられ、2)ではこれに加えてサイトカインやケモカインが高く発現した。3)では大腸がんに特徴的なIDO1の増加が示された。AMPの中でもJAK-STAT経路を刺激する作用が示されているReg3は、盲腸と比較して回腸に多く発現することがRT-PCRおよび免疫染色により示された。 3 腸上皮幹細胞に生じる変化: Lgr5-EGFPマウスとAhR-/-マウスを交配し、Lgr5-EGFP: AhR-/- 二重変異マウスを得た。このマウスはAhRKOマウス同様に、回盲部に腫瘍を形成した。またtamoxifenの腹腔投与によるGFP発現誘導が、immunoblotおよび組織学的に検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画には、4項目を記した。このうち、1 個体・組織レベルの経時変化については、実体顕微鏡やHE染色により、腫瘍形成部位の形態的な変化を調べることができるようになった。2 部位別遺伝子発現の特徴については、DNAマイクロアレイによる解析までが終了している。3 腸上皮幹細胞に生じる変化については、二重変異マウスを作成し腫瘍形成を確認、幹細胞マーカーを検出した。このマウスを使った解析は、今後の課題である。4 AhRリガンドによる腫瘍抑制効果については、個体レベルでの変化を調べることができたが、分子レベルの解析には至っていない。これらの自己点検により、上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1 腫瘍形成に至る組織レベルの経時変化: 回腸ー盲腸連結領域の絨毛は、形態や配置に他の部位とは異なる特徴がみられた。これは、ApcMin/+に生じる小腸腫瘍の周囲にも観察された。絨毛の形態と組織の炎症や腫瘍形成との関連性を調べるため、LPSやDSS投与マウスを用いて絨毛形態や炎症関連の遺伝子発現を解析する。 2 部位別遺伝子発現の特徴: 回腸に発現するReg3がその下流に位置する盲腸の腫瘍形成を誘発する可能性を考え、以下検討する。回盲部組織を免疫染色し、Reg3およびJAK, リン酸化STAT3を発現する細胞の位置関係を把握する。大腸がん細胞株またはマウス腸上皮の初代培養細胞を用いて、Reg3の応答性をリン酸化STAT3を指標に検討する。またELISAにより部位ごとのReg3濃度を調べる。 3 腸上皮幹細胞に生じる変化: 1)幹細胞のAhR発現; Lgr5-EGFPマウスでGFP発現を誘導し、大腸からGFP陽性細胞をcell sorterにより分取する。この細胞のAhR mRNAまたはタンパク質の発現を、GFP陰性細胞と比較する。さらにLgr5-EGFP/AhR-/- 二重変異マウスの大腸からGFP陽性細胞を分取し、その上皮細胞における割合をLgr5-EGFP/AhR+/+ と比較する。2) 分取されたGFP陽性細胞を三次元培養し、増殖能やサイトカインの発現、応答性を解析する。 4 AhRリガンドによる腫瘍抑制効果: ApcMin/+マウスの小腸に生じた腫瘍を材料としてオルガノイド培養をおこない、リガンド添加効果を細胞増殖や幹細胞マーカー等を指標に検討する。AhRを腸上皮特異的にKOしたApcMin/+:vil-cre:AhRfl/flマウスを作成し、これに由来するオルガノイド培養によりリガンド効果の特異性を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス対応のため、出勤日数が減少し、実験に必要な物品の購入と使用が滞ったため。残高は次年度の研究材料の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)