2020 Fiscal Year Research-status Report
miR-210 TGマウスにおける尿細管上皮増殖の機序解明と腎癌の新規治療法開発
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20K07448
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中田 知里 大分大学, 医学部, 特任助教 (60379625)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腎がん / miR-210 (miR-210-3p) |
Outline of Annual Research Achievements |
miR-210 Tgマウスにおいて観察される 尿細管上皮細胞の増殖にかかわる因子を特定するため、TgとWTマウスを比較して発現や活性に差がある分子を抽出し、それらが関与するシグナル経路あるいは代謝経路を特定することを目指した。 GC-MS/MSにより、miR-210 Tgマウス腎臓における代謝産物の変動を網羅的に解析したところ、解糖系の最終産物である乳酸が上昇する傾向にあった。これは、miR-210を導入したHEK293において細胞内の乳酸量、細胞外への分泌量がともに増加したことと一致し、解糖系の亢進を示唆するものであった。 また、マウス腎組織を用いた網羅的発現解析より、miR-210 Tgで発現変動する遺伝子として1559遺伝子をリストアップし、これを用いてpathway解析(DAVID:NIAID/NIH提供)を行ったところ、上位には代謝に関する複数のカテゴリーがならんだ。その一方で、Tgマウス腎組織では炎症が観察されるが、炎症に関連するカテゴリーは提示されなかった。以上より、Tgマウスの近位尿細管上皮細胞ではmiR-210の過剰発現によって 様々な代謝経路に関する遺伝子群が発現変動し、それに伴う代謝の変動が細胞の増殖能に影響を及ぼしているのではないかと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miR-210 Tgマウスで発現変動する遺伝子リストを用いたpathway解析(DAVIDによる)により、代謝に関連する遺伝子が数多く変動していることが分かった。遺伝子が関連するカテゴリーとして、プリン・ピリミジンなどの核酸代謝や、各種のアミノ酸代謝など、代謝に関するものが上位にあげられた。 HEK293にmiR-210を導入して実施したメタボローム解析では、miR-210発現上昇によって細胞内の核酸量、総アミノ酸量が増加することを示しており、核酸合成・アミノ酸合成の亢進が示唆されている。ここでmiR-210 Tgマウスの腎組織でも、核酸代謝やアミノ酸代謝が変動する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-210 Tgマウス腎組織で核酸代謝やアミノ酸代謝が変動する可能性が示唆された。核酸や一部のアミノ酸代謝経路には、解糖系の代謝産物が流入することから、解糖系の活性に影響を受けることが知られている。Tgマウスでは解糖系の亢進が示唆されており、核酸やアミノ酸代謝の変動は解糖系の亢進の副次的な効果によるものかもしれない。今後、まずはじめに解糖系の活性が細胞増殖に及ぼす影響を調べる。またアミノ酸のなかでも、グルタミンとグルタミン酸はアミノ酸総量において大きな割合を占め、がん細胞のエネルギー代謝に関与していることが知られている。グルタミン代謝が細胞増殖に及ぼす影響も調べたい。腎がん細胞株を用いて、代謝経路に対する阻害剤で細胞を処理する、あるいは、代謝経路の律速段階を制御する酵素をsiRNAにより発現抑制することで細胞増殖が抑制されるかを調べる。
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Causes of Carryover |
キャンペーンを利用して必要な物品を購入できた。動物実験施設の改修に伴う飼育計画の変更により、動物飼育費が想定より減少した。残額は来年度の実験消耗品(阻害剤などの試薬)に使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Downregulation of ZNF395 Drives Progression of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma through Enhancement of Growth Potential.2021
Author(s)
Kurogi S, Hijiya N, Hidano S, Sato S, Uchida T, Tsukamoto Y, Nakada C, Yada K, Hirashita T, Inomata M, Murakami K, Takahashi N, Kobayashi T, Moriyama M.
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Journal Title
Pathobiology
Volume: 2021
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
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