2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K07456
|
Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
長久保 大輔 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (10368293)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 大腸 / 杯細胞 / 粘液 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管における生体防御のための構成要素の一つとして腸管内腔を覆う粘液がある。粘液は小腸や大腸に共生している腸内細菌が直接腸管上皮細胞に接するのを防ぐのに役立ち、腸内細菌を宿主から空間的に隔てる防壁となっている。本研究では宿主にとってこのような重要な役割をもつ粘液について、腸管でその産生・分泌の役割を専門的に担っている杯細胞について、特に大腸での分化制御や機能制御を明らかにすることを目的として様々な検討を実施する。これまで令和2年度にin vivoの解析を中心に行い、ケモカインの一つCCL28の欠損マウスの大腸では杯細胞数の減少や分布の異常などを確認し、CCL28が大腸での粘液産生に深く関わることを見出してきた。 令和3年度はCCL28が杯細胞に及ぼす影響を詳細に解析するためにヒト結腸腺癌由来細胞株の HT-29細胞を用いたin vitroでの解析を中心に行った。HT-29細胞はこれまでにも文献的に大腸上皮細胞の分化系モデルとして用いられている細胞株であり、Notchシグナル経路を阻害することによって杯細胞への分化が促進されることが報告されている。 そこでHT-29細胞への組換えCCL28タンパク質の添加や、杯細胞分化に関連した刺激下の細胞内シグナル分子の発現を解析した。その結果、CCL28はNotch経路ではなく、YAP経路を介して杯細胞分化を誘導すること、およびその際にCCL28の受容体の一つCCR10を介していることが明らかとなった。加えて、予めHT-29細胞をNotch経路阻害によって杯細胞に分化させた状態の細胞に対してCCL28の作用を解析したところCCL28は粘液産生促進に働くことも明らかになった。これらの結果から、大腸においてCCL28はCCR10を介した杯細胞への分化誘導作用、および杯細胞における粘液産生促進作用という2つの働きを持つことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞株を用いた解析により、CCL28の杯細胞への影響に関するメカニズムの一端を今回明らかにすることができた。また、大腸がん細胞株を用いた解析からは派生的な研究成果も得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回、in vitroの解析から明らかになったCCL28の持つ大腸上皮における杯細胞への分化誘導作用と、分化した杯細胞における粘液産生促進作用について、CCL28欠損マウスも用いて、in vivoにおけるCCL28の影響に関する詳細な解析を行う。それらを通じてin vitroでの結果との対比を行うと共にそれぞれの作用発現に関与する上流や下流まで含めた包括的な分子機構の解明に繋げる。また、本研究からはCCL28の別の受容体であるCCR3を介した、がんの悪性化に関する派生的な研究データも得られたので、それらについての検討も行う。
|
Research Products
(3 results)