2022 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫を特徴づける生物学的分子基盤の解明とその応用
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20K07463
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
有末 伸子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00242339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東岸 任弘 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授 (20379093) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マラリア原虫 / 保存的遺伝子 / 比較ゲノム / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫に特異的であり、進化の過程で遺伝子配列の変化が少なく、既知の機能ドメインをもたないために、その機能が不明であるような分子をマラリア原虫が持つ約5000の遺伝子の中から40あまりをピックアップした。進化の過程で配列の変化が少ない遺伝子はマラリア原虫増殖に必須であると考えられ、マラリア原虫のみが有するということはマラリア原虫を特徴づけるような機能に関与すると考えられることから、その分子基盤を解明することが本研究課題の目的である。 今年度は昨年度に引き続きピックアップした分子群の中で赤血球期に発現量が多い分子Xに着目し研究を行った。熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparumの分子Xはトロフォゾイト期以降に発現するタンパク分子であり、間接蛍光抗体法によりオルガネラ、おそらくはアピコプラストに局在する分子であることが推測されたが、シグナルが不鮮明であったため、より鮮明な画像を得るために分子の末端に蛍光タンパク(mCherry)を融合タンパクとして発現する「分子X-mCherry」をゲノム編集により作出し、蛍光顕微鏡により局在を観察した。赤色の蛍光はトロフォゾイト期からシゾント期の原虫において複数のスポットとして観察することができた。しかしながら明確な局在位置は判断が難しく、免疫電顕により詳細は局在位置を観察することを考えている。分子Xは必須分子でありノックアウトはできないため発現量を増加させた強発現株、発現量を低下させたノックダウン株をゲノム編集で作製中であり、細胞株の完成後は細胞増殖における変化をマラリア原虫のスタンダード株(3D7株)のものと比較する予定である。また、免疫電顕や相互作用している分子を特定するための免疫沈降実験に使用するための分子X特異的ウサギ抗体の作製も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
異動に伴い研究環境を再セットアップする必要があり、ブランク期間が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
分子Xの機能解析を引き続き行う。 ・マラリア原虫細胞内における局在を間接蛍光抗体法、免疫電顕などにより行う。それに用いる抗体の作製、もしくはタグ抗体を使えるようにするために、分子Xをタグ融合タンパク質として発現する遺伝子改変原虫をゲノム編集により作出する。 ・分子Xの細胞内での働きを知るために、分子Xの強発現原虫、ノックダウン原虫をゲノム編集により作出し、解析する。 ・分子Xが機能する分子基盤を知るために、相互作用する分子群について解析する。方法は免疫沈降及び、質量分析を予定している。 以上のような方法により分子Xがマラリア原虫の生活環のなかで担う機能を明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
異動に伴い研究のブランク期間が生じたため、進捗が遅れている。そのため、本来なら昨年度で終了予定だった研究期間を1年延長した。研究が遅れた分、使用額も予定より少なくなり次年度に繰り越しとなった。繰り越した分で、着目している分子の機能解析を行う。
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