2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation on the origin of human Strongyloides focusing on sampling from primates
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20K07464
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
長安 英治 宮崎大学, 医学部, 助教 (20524193)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糞線虫 / 進化 / 分子系統解析 / 寄生虫 / 線虫 / 霊長目 / 食肉目 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①本課題開始前に採取したミャンマーのアカゲザル由来糞線虫、②宮崎県幸島に棲息する野生ニホンザルからの糞線虫、③動物園飼育下動物由来糞線虫、④エキゾチック動物販売店飼育下動物からの糞線虫の取得・解析への利用を行った。 ミャンマーのアカゲザル、宮崎県幸島ニホンザル、ボルネオオラウータンなど4種の動物園飼育下霊長目動物から fuelleborniを検出した。また同じく動物園飼育下ボルネオリスザルからS. cebusを検出した。 ミトコンドリアcox1遺伝子部分配列を用いたネットワーク解析により、既知配列および新規取得配列を統合して、S. fuelleborniの世界規模での集団構造が明らかになった。S. fuelleborni 7株、S. cebus 1株、さらにS. fuelleborniに近縁と考えれれるS. vituli (ウシの糞線虫)に関しミトコンドリア全長もしくはほぼ全長配列の取得を行った。ミトコンドリアゲノムにコードされた12種のタンパク質配列を用いた分子系統解析を行い、霊長類に感染することが知られれる3種の糞線虫 (S. stercoralis, S. fuelleborniおよびS. cebus)の系統関係と、霊長目動物への寄生性獲得に至った進化シナリオの構築を試みた。その結果S. stercoralisに関しては従来提唱されているようにイヌ寄生性種からの宿主転換が想定される一方、S. fuelleborniに関しては偶蹄類寄生種の霊長目動物への宿主転換シナリオが仮説として示された。S. cebusに関しては近縁と考えられる糞線虫種が存在せず、その進化的起源は依然不明のままであり、この点を明らかにするため、今後中南米における様々な宿主動物からの糞線虫種の解析の重要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行継続に伴う渡航制限により、本来計画されていた海外調査地における野生動物からのサンプリングを実施することができなかった。このような状況下で、ヒトの糞線虫(ステルコラリス糞線虫)の進化過程を様々な宿主由来の糞線虫を用いた分子系統解析から探るという本課題の目標を達成するため、①本課題開始前に採取したミャンマーのアカゲザル由来糞線虫、②宮崎県幸島に棲息する野生ニホンザルからの糞線虫、③動物園飼育下動物由来糞線虫、④エキゾチック動物販売店飼育下動物からの糞線虫の取得・解析への利用を行った。S. fuelleborni, S. cebus及びS. vituliについて、全長、もしくはほぼ全長ミトコンドリアゲノム配列を関し決定することに成功した。特にS. cebusに関しては南米固有の糞線虫として初めてのミトコンドリアゲノム配列情報であり、今後さらなる南米の哺乳類を宿主とする糞線虫からの配列との比較によりS. cebusがどのようにして霊長目動物への寄生性を獲得したのかを知るための重要な手がかりとなると考える。一方、S. fuelleborniに関してはウシやヒツジなどの偶蹄目動物を宿主とするS. papillosus及びS. vituliとの近縁性が示された。偶蹄目動物はアフリカ、ユーラシア、南北アメリカなどの広範な地域に分布する一方、これらの動物から頻繁に検出される糞線虫種の分子同定はこれまでほとんど行われてこなかったた。S. papillosus及びS. vituliの他にも未同定種が存在する可能性は高く、そうした未同定種とS. fuelleborniとの関係を解析することにより、S. fuelleborniが霊長目動物への寄生性を獲得に至った進化シナリオのさらなる詳細を明らかにすることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿った海外調査地(アジア、アフリカ、南米)の野生動物からのサンプリングの実施を目指す。新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況は流動的であるが、外務省の発出する感染症危険情報によるとペルー、ベトナムはレベル2、ガボンはレベル3に分類されているが (5月13日現在)、ガボンに関しても現在のところ落ち着いた状況にある。 ここまでの分子系統解析はミトコンドリアゲノム配列を用いたものであったので、今年度は新たに核ゲノムマーカー遺伝子を用いた解析に着手する。概要ゲノム配列が決定している4種の糞線虫種 (S. stercoralis, S. ratti, S. venezuelensis, S. papillosus)からsingle copy gene を20から50遺伝子程度選抜する。S. fuelleborni, S. cebus, S. vituli等に関してはMiseqシーケンサを用いたgDNAシーケンシングが完了しているので、選抜されたマーカー遺伝子に相当する配列を抽出する。このようにして作成した配列データセットをもとに核ゲノム系統樹を作成し、既に完成しているミトコンドリアゲノム系統樹との比較を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴う渡航制限のため、平成3年度は予定していた海外調査を実施しなかったため所用額と実使用額との間に差額が生じた。この金額に関しては平成4年度中に実施予定の海外サンプリング調査において使用することを計画している。
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