2021 Fiscal Year Research-status Report
病原真菌のミトコンドリアにおける宿主血清コレステロール利用機構の解明
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20K07475
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 美智代 千葉大学, 真菌医学研究センター, 特任助教 (70525386)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Candida glabrata / 真菌 / ステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性カンジダ種は口腔、皮膚や消化管などに常在する真菌であり、高齢者や免疫抑制剤などの使用により免疫力の低下した患者において、重篤な日和見感染症を引き起こす。1990年代からカンジダ症の治療において、細胞膜の構成因子であるエルゴステロール合成を阻害するアゾール系抗真菌薬が頻用されるにつれ、カンジダ種の中でも、アゾール系抗真菌薬に対する感受性が低いカンジダ・グラブラータ(Candida glabrate, 以降グラブラータ)の症例数が年々増加し問題となっている。 グラブラータは、宿主血中のコレステロールを取込み、自身のステロールとして利用する宿主コレステロール取込み機構をもつ。これまでに、ステロールは、取込まれたコレステロールが、液胞やミトコンドリアなどのオルガネラにどのような制御を受け運ばれるかは不明である。昨年度に続き、本年度はミトコンドリアと小胞体の接触部位に存在するERMES複合体のうち、制御因子とされるgem1破壊株のフルコナゾール耐性に注目し解析を進めた。フルコナゾールは、エルゴステロールの合成が阻害され毒性のステロールが生産されることで抗真菌作用を示すことが知られているが、その作用機序は不明である。Gem1pは、パン酵母からヒトに至るまでホモログが存在するるGTPaseである。GTPaseドメインとCa2+結合タンパク質に存在するEF-ハンドモチーフを二つずつ持ち、C末側に膜貫通ドメイン(TM)を持つ。GTPaseドメインまたはEF-ハンドモチーフ内のアミノ酸を置換し、gem1破壊株で発現させたところ、GTPaseドメインに変異を持つ場合にフルコナゾール耐性が観察されたことから、Gem1のGTPase活性がグラブラータにおいてフルコナゾール作用機構において重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
gem1破壊株のフルコナゾール耐性に注目した解析により、ERMES複合体がフルコナゾールの作用機序に関与するという新たな知見が示唆されたため
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Strategy for Future Research Activity |
gem1破壊株のフルコナゾール耐性の原因として、ミトコンドリアへの毒性ステロールの蓄積が原因か解析を行う。また、ERMES複合体でのステロール分布について解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)参加を検討していた国際学会の中止や学会開催がリモートとなったため、旅費が発生しなくなった。また、人件の確保ができず、人件費が発生しなかったため。 (使用計画)人件費や実験や必要な試薬の購入、および論文投稿費用として使用する予定である。
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