2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管感染環境への応答を軸とした腸炎ビブリオⅢ型分泌装置発現のRNA制御の理解
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20K07478
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 重輝 大阪大学, 微生物病研究所, 講師 (30506499)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸炎ビブリオ / 遺伝子発現 / Ⅲ型分泌装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
食中毒原因細菌である腸炎ビブリオの本来海洋に生息しており、感染環境において物理・化学的条件の変化に曝されるが、本菌の主要な病原因子であるIII型分泌装置の遺伝子発現はこのような外的条件変化に応答して変動する。本研究ではこのような腸炎ビブリオIII型分泌装置の発現制御について、RNAシャペロンを介したRNA制御の観点からその分子メカニズムおよびネットワークを解き明かし、腸管感染環境に応答した腸炎ビブリオIII型分泌装置の発現制御メカニズムの全体像の理解を目指している。 本年度は腸炎ビブリオの主要なRNAシャペロンのIII型分泌装置の発現制御への寄与について、作製した遺伝子欠失体を用いてIII型分泌装置の構造因子、分泌基質、制御因子についてその遺伝子およびタンパク質発現をプロモーター活性、qPCR、イムノブロットにより評価した。これらの結果から腸炎ビブリオIII型分泌装置の遺伝子発現におけるRNA制御の寄与、そして特に一部のRNAシャペロンの制御は制御因子に対して相互的であることが明らかになり、RNA制御のネットワークが示唆された。胆汁成分によるIII型分泌装置の発現変動について、構造因子、分泌基質、制御因子の遺伝子およびタンパク質の発現変動を因子ごとに解析するとともに、腸炎ビブリオ全遺伝子発現変動をRNA-seqによりプロファイリングした。これらの解析結果から、III型分泌装置の発現変動制御は当初予想よりも多元的で冗長性を伴う複雑な制御であることが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定どおりRNA制御に関わる遺伝子の変異体の作製および性状、III型分泌装置関連遺伝子の発現を解析することで、これら因子の腸炎ビブリオIII型分泌装置発現変動に対する寄与、作用レベルを明らかにした。またこれらの因子の相互性を見出し、制御ネットワークの理解への道筋が見えてきた。一方でこれらの解析をつうじてIII型分泌装置の発現制御レベルが一元的でなく予想より複雑であることも明らかになってきた。しかし今年度に関しては初年度計画どおりに研究計画上必要な基礎的情報を取得でき、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
腸炎ビブリオのRNA制御によるⅢ型分泌装置発現制御について、本年度計画によってえられた知見を深化させるべく、当初計画に基づきその発現制御の分子機序を解析し、相互性のメカニズムを解き明かす。また今年度の解析から腸炎ビブリオIII型分泌装置の発現変動は想定より多元的な制御であることが明らかになったことから、来年度はRNA-seqを用いたゲノムワイドな解析を拡充し、個別の因子からのアプローチと併せて腸炎ビブリオIII型分泌装置の発現変動の分子メカニズムの理解を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は参加を予定していた学会の開催自体が中止されるなどの社会的情勢の関係上、当初の予定より旅費の支出が大きく減少することになった。また、一部試薬や解析についてはキャンペーン期間を利用するなどして予定より支出を低く抑えることができた。これらの事由から本年度研究費に未使用額が生じ、次年度使用額として転じることとなった。これらは成果発表を目的とした学会参加のための旅費、本年度の解析結果から研究推進上要請される発現解析にかかる物品費に充当し、当初の次年度計画と併せて研究計画のさらなる推進を図る。
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