2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト気道に潜む新規微生物(IOLA)の培養法の確立と遺伝的多様性の解明
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20K07491
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
福田 和正 産業医科大学, 医学部, 准教授 (40389424)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新規感染性微生物 / 呼吸器感染症 / 小児鼻汁 / 16S rRNA遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人の慢性下気道感染患者由来の気管支肺胞洗浄液から検出された病原性が疑われる細菌IOLAは、既知のヒト関連細菌に比べてゲノムサイズが最も小さく、GC含量が最も低い、科のレベルで新規な細菌であることが明らかになっている。しかし、いまだに培養法が確立されておらず、その性状についてはほとんど明らかにされていない。本年度は480の小児鼻汁検体を対象としたIOLAのサーベイランスを行い、12のIOLA陽性検体を得た。また、IOLA陽性鼻汁をヒト由来気道上皮細胞と共培養することでIOLAが増殖(2週間で約100倍)することを見出した。 期間全体を通じて福岡市および北九州市の小児科クリニックを受診した鼻汁症状を呈する小児から合計1,920個の鼻汁検体を収集し、合計103のIOLA陽性検体を得た。小児鼻汁におけるIOLAの検出頻度は5.4%(103/1,920検体)であった。また、IOLAの検出には地域性、季節性は認められず、発熱や性差における検出頻度の違いも認められなかった。しかし、年齢に関しては2、3才および6才で検出頻度が高い傾向が見られた。IOLA 16S rRNA遺伝子の系統解析の結果、IOLA 16S rRNA遺伝子配列には、5つの配列系統が存在することが明らかになった。また、呼吸器感染症の成人患者で検出された系統が、5つの系統の1つに集中していることが明らかになった。小児の上気道症状へのIOLAの関与については明らかではないが、保育園や小学校等の集団生活によって水平伝搬していると考えられた。IOLAには種レベルで異なる系統が少なくとも5系統あり、系統別の病原性に違いがあることが強く示唆された。また、ヒト由来気道上皮細胞との共培養によりIOLAの増殖が可能であることが示された。本研究で得られた成果は、IOLAの性状や病原性を解明するために極めて有用な情報になると考えられる。
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Research Products
(2 results)