2020 Fiscal Year Research-status Report
単純ヘルペスウイルス遺伝子発現移行と再活性化機構の解析
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20K07511
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸鶴 雄平 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50825750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HSV |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究対象である単純ヘルペスウイルス(HSV)は代表的なDNAウイルスであり、ヒトに脳炎、性器ヘルペス、皮膚疾患、眼疾患など、多様な病態を引き起こす。アシクロビルが開発された今日においても、脳炎患者の70%は社会復帰できないか死亡する。したがって、HSVは医学上極めて重要なウイルスであり、HSV研究の重要性は明らかである。また、HSVの特徴は、一度感染するとヒトの神経に潜伏し、再活性化を繰り返す事によって終生に渡りヒトに疾患を引き起こす事である。HSVは宿主細胞に侵入後核内で、前初期遺伝子、初期遺伝子、後期遺伝子という3種の遺伝子群をカスケード状に発現する。前初期遺伝子の発現はHSVのウイルス粒子中に含まれるVP16が前初期遺伝子群のプロモーターに結合し、活性化することによって引き起こされる。その一方で、前初期遺伝子から初期遺伝子以降の発現への移行機構については不明な点が多い。申請者らは感染細胞の遺伝子発現のバラつきからHSVの遺伝子発現制御機構を解明することを目的として、HSV感染細胞の1細胞RNA-sequenceを行った。その結果、細胞内金属イオンがHSVの遺伝子発現の移行段階に関与していることが示唆された。本研究はHSVの遺伝子発現における細胞内金属イオンの役割について解析を行い、HSVの遺伝子発現移行機構を解明することを目的としている。 令和2年度は細胞内金属イオンの遺伝子発現に対する影響を解析する為に、細胞内金属イオン枯渇時のHSVの前初期、初期、後期遺伝子の発現量に関して解析を行った。その結果、申請者らの1細胞RNA-sequenceの結果から示唆された通り、細胞内金属イオンがHSVの遺伝子発現移行段階に関与することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当所の計画では細胞内金属イオン枯渇時にHSVがコードする遺伝子発現制御因子のChIP-assayを行うことにより、細胞内金属イオンによるウイルスの遺伝子発現移行機構を解析する予定であった。しかし、細胞内金属イオンの枯渇はHSVの侵入段階にも阻害的に作用し解析予定であった遺伝子発現制御因子の発現量自体も減少させたため、単純な野生型ウイルスの感染によるChIP-assayはできないと判断した。今後は、解析対象の遺伝子発現制御因子の定常発現細胞とその因子を欠損させた変異ウイルスを用いることによって解析を行うことを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
進歩状況でも記載した通り、今後は、解析対象の遺伝子発現制御因子の定常発現細胞とその因子を欠損させた変異ウイルスを用いることによって、金属イオン枯渇時のChIP-assayを行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
当初予定していたChIP-assayの実施が遅れた為、当初購入予定であった抗体やプロテインG磁気ビーズ等の試薬代を使用しなかった。研究の進行が予定通り進めば令和3年度は令和2年度に購入予定であった試薬類、及び令和3年に研究計画当初から使用予定であった試薬類を購入予定である。
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Research Products
(7 results)