2022 Fiscal Year Research-status Report
単純ヘルペスウイルス遺伝子発現移行と再活性化機構の解析
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20K07511
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸鶴 雄平 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50825750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HSV / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象である単純ヘルペスウイルスはヒトに感染すると神経に潜伏し、再活性化を繰り返すことによって終生に渡り疾患を引き起こし続ける。HSVは宿主細胞に侵入後核内で、前初期遺伝子、初期遺伝子、後期遺伝子という3種の遺伝子群をカスケード状に発現する。前初期遺伝子の発現はHSVのウイルス粒子中に含まれるVP16が前初期遺伝子群のプロモーターに結合し、活性化することによって引き起こされる。その一方で、前初期遺伝子から初期遺伝子以降の発現への移行機構については不明な点が多い。本研究の開始以前に、申請者らは感染細胞の遺伝子発現の不均一性からHSVの遺伝子発現制御機構を解明することを目的として、HSV感染細胞の1細胞RNA-sequenceを行った。その結果、細胞内金属イオンがHSVの遺伝子発現の移行段階に関与していることが示唆されていた。令和4年度は当該金属イオンによる活性制御部位を消失させた変異Prを保持する変異HSVを作出し、培養細胞においてその性状を解析した。その結果、(i)作出した変異HSVは野生株と比較して培養細胞における子孫ウイルス産生量が低下すること、(ii)作出した変異HSVは野生株と比較して初期遺伝子、及び後期遺伝子の発現が低下することが明らかになった。これらの結果は、Prにおける活性制御部位がHSV感染細胞における効率的なウイルス遺伝子発現とウイルス増殖に必要であることが示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度はPrにおける当該金属イオンによる活性制御部位を同定し、更に、同定した活性制御部位を消失させた組換えHSVを作出しその性状を解析することによって、本研究で着目している新規ウイルス遺伝子発現移行機構の理解を深化させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作出した変異HSVを用いてChIP-assayを実施することにより、当該金属イオンによる活性制御部位がPrがウイルスゲノムに結合することに必要かどうかを検証することによって、当該金属イオンによる、より詳細なウイルス遺伝子発現制御機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究では研究計画当初想定していなかったPrの当該金属イオンによる活性制御部位を同定することができた。従って次年度以降もHSVの遺伝子発現移行機構の更に詳細な機構の解析を実施する必要が生じた。繰り越した助成金はPrの当該金属イオンによる活性制御部位を消失させた組換えHSVを用いたウイルス遺伝子発現移行機構の解析に使用する。
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Research Products
(4 results)