2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of viral uncoating in influenza A virus and HIV-1
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20K07513
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三宅 康之 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10452294)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / HIV-1 / タンパク質発現 / TNPO1 / M1 / 脱殻 |
Outline of Annual Research Achievements |
A型インフルエンザウイルスが細胞内に侵入する過程でウイルスゲノムのアンコーティング(vRNP uncoating)に機能する宿主核輸送因子TNPO1とウイルスの殻を構成するM1タンパク質の複合体分子構造を明らかにすることを目的としている。これらの分子間相互作用はウイルスの宿主への感染に重要な反応であり、この相互作用を阻害する低分子化合物などの探索により新たな創薬に繋がることが期待される。本年度は複合体解析のため、引き続き個々または複合体としてタンパク質の発現、精製を試みた。TNPO1-M1の複合体は昆虫細胞内で共発現することが可能となり、その大量精製を試みている。現在までに中性条件及び酸性条件下で発現細胞を可溶化し、精製を行なったが、pHによる複合体形成への影響は認められていない。しかし、興味深いことにTNPO1と相互作用しているM1分子は全長のものだけであることが明らかとなった。これはM1タンパク質のC末端領域がTNPO1との相互作用に必要な領域であることを示している。一方、ビオチン化標識が可能なAvi-tagを持つM1タンパク質を大腸菌による発現系で発現を確認し、精製を試みた。Avi-tagを持つM1タンパク質はそれを抗原とした抗体様低分子DARPinの開発スクリーニングに用い、TNPO1-M1複合体の解析に有用なツールとする。さらにTNPO1の結合配列を持つと考えられるHIV-1の精製CAタンパク質を用いて再構成の条件検討を行ったが、CAタンパク質のチューブ形成には至っていない。またエボラウイルスのVP40タンパク質の発現ベクターを作成し、現在そのタンパク質発現を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌、昆虫細胞および哺乳類発現系によるタンパク質発現が実験室内で行えるよう整備が完了し、目的タンパク質の発現をそれぞれの系で迅速に評価できる環境が整った。ヒトTNPO1を昆虫細胞(Sf9)内で新たに発現を試み、Westernブロッティングにおいてタンパク質の発現を確認した。大腸菌内及び哺乳類細胞内でのTNPO1単独発現では、タンパク質の発現は確認されたが、分解産物が多く観察されたため、昆虫細胞発現系が最適であることが示唆された。またMultiBAC systemを用いてTNPO1及びM1タンパク質を同時に昆虫細胞内で発現、精製を試みた。中性または酸性条件下で細胞を溶解し、NiNTAビーズでタンパク質の精製をおこなった結果、TNPO1とM1が複合体を形成していると考えられる画分に溶出した。同時にTNPO1またはM1単独で発現している画分も確認することができた。WesternブロッティングによりM1タンパク質の状態を確認したところ、TNPO1と相互作用している分子は全て全長のM1タンパク質であることが明らかとなった。これはM1のC末端領域がTNPO1との相互作用に必要であることを示唆している。M1に対する抗体様低分子であるDARPinを作製するためにAvi-tagを付加したM1タンパク質を発現、精製した。現在、英国ブリストル大学の山内洋平博士およびZurich大学のAndreas Plueckthun博士らとの共同研究でそのスクリーニングを行なっている。HIV-1のキャプシドである精製CAタンパク質のチューブ形成条件を引き続きin vitroで検討を行っており、高塩濃度下ではnative-PAGEによりチューブを形成していると考えられる高分子領域に泳動されることを確認したが、電子顕微鏡下では観察されなかった。以上の研究経過を踏まえ、総合的には順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、宿主核輸送因子TNPO1およびインフルエンザウイルスM1タンパク質の複合体精製のためのタンパク質発現を試みる。同時に2つのプラスミドを昆虫細胞もしくは哺乳類細胞内で共発現し、安定した複合体として精製できるか、検討する。個々の因子についても発現条件の検討を行う予定である。個別に発現を確認したM1タンパク質に関しては、今後はバキュロウイルスの感染力価を上げ、タンパク質発現の条件を検討する。M1タンパク質に対する抗体様低分子DARPinのスクリーニングが完了次第、DARPinを発現、精製し、M1とTNPO1との相互作用を阻害するかどうか、検討する。そこでまずM1タンパク質のGly18を含む断片を大腸菌発現系にて精製し、抗原として利用する予定である。HIV-1 CAタンパク質のチューブ形成条件を検討し、チューブ形成反応にTNPO1タンパク質がどのような影響を与えるのか、電子顕微鏡下で観察を試みる。また、エボラウイルスの殻を構成する因子VP40の発現および精製を試み、TNPO1との相互作用が見られるか検討する。
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Research Products
(4 results)