2021 Fiscal Year Research-status Report
サイトカイン分泌経路を逆利用したHIVタンパク質輸送と細胞間伝播
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20K07518
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
森川 裕子 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (20191017)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HIV / Gag / サイトカイン / 輸送機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)宿主因子STX6の役割: STX6ノックダウン(KD)やノックアウト(KO)によりHIV-1産生が抑制されるとともに、TNFa分泌が減少した(前年度確認済み)。 2)TNFa分泌:免疫系細胞(T細胞系と単球系)ではHIV-1感染によりTNFa分泌が増加することが判明した(ELISAで測定)。Nefタンパク質によるTNFa分泌が示唆されているが、Nef欠損HIV-1を用いた場合でもTNFa分泌は増加した。 3)細胞内共局在および共輸送:HIV-1感染単球系細胞(U937とTHP-1細胞)ではHIV-1 Gagタンパク質と内在性TNFaの共局在が示された。HeLa細胞でもGagタンパク質と内在性STX6の共局在が確認できた。また、蛍光タンパク質で標識したGag、TNFa、STX6を用いて、共焦点顕微鏡でこれら3つの共局在を、生細胞イメージングでGag-STX6、STX6-TNFa、Gag-TNFaの共輸送を明らかにした。微小管破壊によりこれらの輸送は停止した。 4)Gag、STX6、TNFaの相互作用:Gag、STX6、TNFa発現細胞から調製した膜画分の免疫沈降、可溶化後の免疫沈降、pulldown assayにより、Gag-STX6の直接結合(Gag MA domainとSTX6 SNARE domainを介する)、STX6とTNFaの直接結合(STX6 C末端領域とTNFa細胞質尾部を介する)、Gag-TNFaの膜を介する相互作用が示された。これらからトポロジーモデルを作成した。 5)感染シナプス:STX6 KDおよびKO細胞を用いて、感染細胞と標的細胞の接着による感染シナプス形成(Gagタンパク質の集積)を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)T細胞系(Jurkat細胞)を用いる予定であったが、TNFaはマクロファージからより分泌されるため、単球系(U937, THP-1細胞)を用いることに変更した。 2)単球系細胞(U937とTHP-1細胞)で内在性TNFaの免疫染色・蛍光観察ができたため、tet-on誘導型の蛍光タンパク質標識TNFaの発現細胞樹立を後回しにした。従って、免疫細胞での生細胞イメージングはできていない。HeLa細胞ではGag-STX6、STX6-TNFa、Gag-TNFaの共輸送と微小管系輸送が確認できた。 3)Gag、TNFa、STX6の3つの共局在が形質膜でも観察され、またSTX6のHIV粒子への取り込みも観察された(TNFaについても検討する予定)。 4)感染シナプス(感染細胞と標的細胞の接着により形成される構造)におけるGagタンパク質の極性輸送をSTX6 KDおよびKO細胞を用いて解析できた。TNFaの極性輸送は現在検討中。HIV感染細胞からのTNFa産生と標的細胞の誘引については次年度解析する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)形質膜出芽HIVにおけるSTX6とTNFaの取り込みは、細胞の共焦点顕微鏡観察と精製HIV粒子の分析で解析する。 2)感染シナプス(単球系-T細胞系の組み合わせを用いる予定)におけるGagタンパク質とTNFaの極性輸送を観察する。 3)感染細胞からの産生されるTNFaにより標的細胞が誘引されるかを、transwellを用いたtransmigration assayとタイムラプスで解析する(感染U937細胞-標的Jurkat細胞の組み合わせを用いる)。
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Causes of Carryover |
論文投稿が遅れたため今年度内での論文掲載料が発生せず、次年度に繰り越しとなった。
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