2020 Fiscal Year Research-status Report
選択的Wnt/β-catenin/CBP阻害剤による肝正常化機序の解明
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20K07521
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
宗片 優子 (徳永優子) 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主任研究員 (80555011)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝正常化作用 / 脱老化作用 / 空間的遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
選択的Wnt/beta-catenin/CBP阻害剤であるPRI-724は、肝線維症を発症したHCV誘発性慢性肝炎モデルマウス(HCV-Tg)の線維性隔壁を消失させ、線維の消失と肝臓組織像の改善を引き起こす。本研究の目的は、PRI-724による脱老化・肝正常化に伴って発現が変化する分子と肝臓での局在を同定し、C型肝硬変からの肝正常化機構を解明することである。 本年度は、肝実質細胞のPRI-724による遺伝子発現変化を包括的1細胞トランスクリプトームの手法を用いて解析する予定であったが、Visium空間的遺伝子発現解析を先行して進めたいと考え、技術習得や条件検討等の準備を行った。 Visium空間的遺伝子発現解析は、トランスクリプトーム全体を形態学的な情報にマッピングするため、肝臓の「どこで」「何が」起きているかを知ることができる強力なツールであると考えている。肝実質細胞は存在する領域毎に機能が異なることが知られており、包括的1細胞トランスクリプトームのように肝灌流法で分離した肝実質細胞を解析に用いる場合よりも各領域で起こっている事象に迫れると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
妊娠・出産のため、2020年4月から10月まで休暇を取得した。そのため、研究期間が当初予定より短くなった。 研究再開にあたり、より研究目的に合致していると思われる解析手法に切り替える決断をしたため、進捗状況は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、より研究目的に合致していると思われる解析手法(Visium空間的遺伝子発現解析)の導入を決め、準備を進めてきた。今後は、本手法を用いてPRI-724投与による脱老化・肝正常化に伴って肝実質細胞で遺伝子発現が変動する分子とその局在を同定し、肝臓組織の正常化に寄与する候補分子を絞り込む。候補分子の発現変化は免疫組織染色法またはin situ hybridization法により解析し、蛋白質レベル・別の個体でも同様の領域で発現変化が認められるか明らかにする。候補分子またはshRNAをHCV-Tgマウス(肝線維症を発症)に導入し、肝臓組織改善作用を解析する。 これらの解析により、PRI-724による脱老化作用を介した肝臓正常化作用機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
妊娠・出産により4月から10月までの7か月間研究中止期間があり、研究再開時に解析手法の大幅な変更があったため、今年度中に次世代シーケンサーによる遺伝子発現解析を実施しなかった。次年度にVisium空間的遺伝子発現解析(次世代シーケンサーも含む)を実施予定である。
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