2021 Fiscal Year Annual Research Report
選択的Wnt/β-catenin/CBP阻害剤による肝正常化機序の解明
Project/Area Number |
20K07521
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
宗片 優子 (徳永優子) 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主任研究員 (80555011)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝正常化作用 / ミトコンドリア / ATP産生亢進 / RNAシーケンス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
選択的Wnt/beta-catenin/CBP阻害剤であるPRI-724は、肝線維症を発症したHCV誘発性慢性肝炎モデルマウス(HCV-Tg)の線維性隔壁を消失させ、線維の消失と肝臓組織像の改善を引き起こす。本研究の目的は、PRI-724による脱老化・肝正常化に伴って発現が変化する分子と肝臓での局在を同定し、C型肝硬変からの肝正常化機構を解明することである。 本年度は、肝実質細胞のPRI-724による遺伝子発現変化を解析する目的で、Visium空間的遺伝子発現解析の技術習得と条件検討を引き続き行った。本解析のために動物実験から改めてサンプルを調製する必要性があり、そのための実験も行った。 上記の解析と併せて、PRI-724による肝臓組織正常化に伴い肝臓内のATP量が増加することを見出しており、最大のATP供給源であるミトコンドリアに着目してメカニズム解析を実施した。電子顕微鏡による観察の結果、PRI-724投与肝臓ではミトコンドリア数が増加傾向にあることが明らかとなり、実際にミトコンドリア機能の改善も示された。肝臓内の遺伝子発現変化をRNAシーケンス解析で網羅的に解析した。その結果、HCV長期持続発現により細胞内の代謝は解糖系に傾くが、PRI-724投与によって酸化的リン酸化へとシフトしており、この代謝シフトにより効率的なATP産生が起こる可能性が示唆された。 PRI-724による代謝経路のシフトに寄与する候補分子(Wnt標的遺伝子)を見出しており、今後は候補分子のATP産生上昇と肝臓正常化作用を明らかにすることでPRI-724による肝臓正常化機序に迫れると期待している。
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