2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒツジ肺腺腫発症因子レトロウイルスエンベロープの構造決定とがん化シグナル解析
Project/Area Number |
20K07523
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 直良 北海道大学, 薬学研究院, 特任准教授 (80444800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レトロウイルス / JSRV / ENTV / トランスフォーメーション / 腫瘍 / タンパク質 / 構造解析 / 宿主因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
Jaagsiekte sheep retrovirus (JSRV)とenzootic nasal tumor virus type 1(ENTV-1)の構造タンパク質エンベロープは、どちらもがん遺伝子として機能し、JSRVエンベロープはヒツジの肺で、ENTV-1エンベロープはヒツジの鼻腔内で腫瘍を発症させる。今回新たにヤギENA由来ENTV-2エンベロープをクローニングしその機能を解析することで、JSRVエンベロープタンパク質との違いを比較、検証した。本研究で初めてENTV-2エンベロープタンパク質にもがん遺伝子活性を見出し報告した(Maeda N, Virus Genes 2021)。ENTV-2エンベロープでトランスフォームした線維芽細胞を樹立し、エンベロープ下流のシグナル伝達経路について解析し、JSRVエンベロープと同様にRas-MEK-MAPK、PI3k-Akt-mTOR、およびp38が活性化していることを見出した。またRac1特異的阻害剤による線維芽細胞フォーカス形成の阻害、Focal adhesion kinaseやグアニンヌクレオチド交換因子VAV2のリン酸化から、これら分子の恒常的活性化が細胞トランスフォーメーション、特に細胞の運動性に関与していることを見出した。ENTV-2エンベロープ細胞外領域に変異を導入することにより、線維芽細胞のトランスフォーメーション効率を著しく減少したことから、エンベロー細胞外領域がトランスフォーメーションに関与していることが示唆された。更にJSRV、およびENTV-2エンベロープタンパク質でトランスフォームした線維芽細胞をヌードマウスに皮下接種することで腫瘍形成を確認した。この腫瘍モデルは、今後in vivoでのエンベロープの機能解析や、トランスフォーメーションに関与する分子に対する阻害薬の効果を検討する上で有用と考えている。
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