2022 Fiscal Year Research-status Report
アイチウイルスゲノム複製部位のコレステロール蓄積に必要な宿主・ウイルス因子の解析
Project/Area Number |
20K07529
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
佐々木 潤 藤田医科大学, 医学部, 講師 (70319268)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アイチウイルス / ピコルナウイルス / ゲノム複製 / コレステロール / IFITM1 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイチウイルス(AiV)を含むプラス鎖RNAウイルスは、感染細胞内のオルガネラ膜を再構成し、自身のゲノム複製の場となる複製オルガネラを構築する。ウイルスは細胞の輸送・代謝システムをハイジャックしてウイルスタンパク質の他に特定の宿主タンパク質や脂質を蓄積させ、ウイルスゲノム複製に適した環境を作り上げる。我々はAiVがコレステロール輸送タンパク質OSBPの関与する細胞内コレステロール輸送システムを利用し、小胞体からゲノム複製部位にコレステロールを輸送することを明らかにした。本研究では、AiVタンパク質が宿主タンパク質IFITM1をリクルートし、エンドソームから複製オルガネラへのコレステロール輸送に関与していることを明らかにし、論文として投稿中である。当該年度終了時点では、reviseの段階である。 また我々は新たに、脂質を含む物質の細胞内輸送に関与する宿主タンパク質の機能を阻害する薬剤Xが、AiVゲノム複製を阻害することを突き止めた。興味深いことに、この阻害剤は、ピコルナウイルスの別の種、ポリオウイルスやエンテロウイルスのゲノム複製には効果がないことが知られている。一方、薬剤Xと同じ宿主タンパク質を標的とするとざれる阻害剤Yは、ポリオウイルスには効果があるが、AiVには、全く効果がないことも明らかにした。AiVとポリオウイルスでは、複製オルガネラへのコレステロール輸送は共にOSBPの関与する細胞内コレステロール輸送システムを利用していることから、これらの薬剤の、ウイルス複製における阻害機構の解析は、AiVとポリオウイルスの複製オルガネラ形成およびゲノム複製機構の未知のステップや相違点などを明らかにできるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「IFITM1のAiVゲノム複製への関与の詳細な解析」に関して、「AiVタンパク質が宿主タンパク質IFITM1をリクルートし、エンドソームから複製オルガネラ関与する」ことを明らかにし、論文として権威ある学術誌に投稿した。2022年度終了時点で受領まであと一歩のところまで来ている。また、薬剤XによるAiVゲノム複製阻害をあらたに見出し、これは、新たな宿主因子の同定や複製オルガネラ形成およびゲノム複製機構の解明につながる発見であり、現在解析をすすめている。これらのことから、現在までの進捗状況は、おおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が新たに見出した、脂質を含む細胞内輸送に関与する宿主タンパク質の機能を阻害する薬剤Xに関して、薬剤Xの標的宿主・ウイルス因子の同定、阻害されるステップの詳細な解析を行っていく。具体的には、候補タンパク質のノックダウンおよび薬剤存在下での過剰発現のAiVゲノム複製やコレステロール輸送への影響、ウイルスタンパク質との相互作用の有無、薬剤存在下での細胞内局在の変化などを詳細に解析し、新たな宿主因子の同定や複製オルガネラ形成およびゲノム複製機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は約87万円を使用しており、本研究の1年あたりの予算額80万円をやや上回り、年単位で見れば、予定通りの予算執行であると考える。最終年度である来年度は、siRNAや抗体など比較的高価な試薬が必要となることが予想されるほか、研究の推進のため、引き続き研究補助員雇用を予定しており、予定通りの額の予算を執行していけるものと考えている。
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