2020 Fiscal Year Research-status Report
IL-22を標的とした高齢者喘息に対する治療技術の創出
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20K07544
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
中平 雅清 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60454758)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Th1型気道炎症 / IL-18 / IL-22 / super Th1細胞 / 高齢者喘息 / 好中球性気道炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はすでに、(1) Th1細胞を抗原+IL-18で刺激することで誘導されるsuper Th1細胞がIFN-γ、IL-13だけでなくIL-22産生も示すこと、(2) 卵白アルブミン (OVA) と完全フロイントアジュバント (CFA) で能動免疫したマウスにOVA+IL-18を点鼻することによって気道炎症を惹起するTh1型気道炎症モデルにおいて抗IL-22中和抗体の同時投与を行うと、気道内出血と肺組織損傷・出血像が誘導されることを確認していた。これらのことから、Th1型気道炎症の重症度が、炎症を誘導し肺組織損傷を惹起するIFN-γ/IL-13と肺組織保護作用を示すIL-22とのバランスによって決定されると考えられたことから、Th1型の存在が予想される難治性の好中球性高齢者喘息の病態コントロールに対してIL-22を用いたバランス制御の応用が期待された。 そこで、まず2020年度は上記のIL-22の組織保護作用を確認するために、OVA+CFAで能動免疫したIL-22欠損マウスにOVA+IL-18の経鼻投与を行うことでTh1型気道炎症を惹起し、その気道炎症の病態を野生型マウスのものと比較する実験を実施した。抗IL-22中和抗体を用いた先行実験の結果と相関して、OVA+IL-18の経鼻投与を行ったIL-22欠損マウスでは、野生型マウスに比し、気道への炎症細胞浸潤の増大とともに深刻な気道内出血や肺組織の損傷・出血像が確認された。また、IL-22欠損マウスへのOVA+IL-18の経鼻投与時にリコンビナントIL-22の同時投与を行うと、気道内出血や肺組織の損傷・出血像の軽減が確認された。以上のことから、Th1型気道炎症においてIL-22は組織保護作用を発揮すること、又、IL-22の投与によってTh1型気道炎症の病態改善が期待できることがあらためて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、先行実験の結果から予想されたTh1型気道炎症におけるIL-22の肺組織保護作用を確認することを主たる目標に掲げた。その結果は、上記の「研究実績の概要」の項目に記したように、IL-22欠損マウスの使用によってその仮説を裏付けることできたことから、2020年度に検討するべき内容はクリアできたと考えている。 当初この実験は同様の実験を2020年度中に3~4回繰り返すことを考えていたが、新型コロナウィルス感染症等の影響で年度初頭におけるマウスの確保が制限された結果、予定していた回数の実験を実施することが叶わなかった。また、2021年度実施予定の実験に用いるOVA特異的Th細胞のin vitroでの分化条件の検討作業も2020年度中に行うことを計画していたが、OVA特異的TCRトランスジェニックマウス (OT-Ⅱマウス) の繁殖状況が悪かったため、Th1細胞の分化条件は確定したものの、Th17細胞の分化条件に関してはまだなされていない。OT-Ⅱマウスの繁殖状況の問題はIL-22欠損OT-Ⅱマウスの系統を作製する点にも影響を与えており、すぐにはIL-22欠損OVA特異的Th細胞の移入実験の実施が困難な状況となっている。 以上のような予期していなかったことの影響はあるものの、2020年度に計画していた項目の検討はなされ、その実験結果は本研究計画立案時の予想に則したものであったことから研究計画の大きな変更等は必要なく、本研究計画は当初の計画通り進めていって問題ないと判断できた。故に、進捗状況を「おおむね順調に進捗している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度実施実験で用いたTh1マウスがOVA+CFAの能動免疫によって作製されたものである以上、当実験系におけるIL-22のソースとしてCFAによって誘導されたTh17細胞やCD4陽性T細胞サブセット以外の細胞種の可能性は否定できない。そこで、2021年度はTh1細胞由来IL-22の重要性を検討する。具体的には、OT-Ⅱマウス由来のナイーヴCD4陽性T細胞をin vitroで分化させたTh1細胞をIL-22欠損マウスに移入した後、Th1型気道炎症を惹起し病態評価を行う。当初の計画では、移入するTh1細胞を野生型とIL-22欠損型の2種類を用意しそれらを比較することで移入したT細胞由来のIL-22とそれ以外の細胞由来のIL-22の組織保護作用を検討する予定であった。しかし「進捗状況」の項目で記したように、IL-22欠損OT-Ⅱマウス系統の樹立がまだなされていないことから、さしあたりT細胞由来IL-22の寄与の検討は、抗IL-22中和抗体を併用することで代用することを考えている。もちろん、IL-22欠損OT-Ⅱマウスの系統が十分に確保された段階で、IL-22欠損T細胞の移入に切り替えて、実験結果の再確認を行う。 2022年度以降に予定している高齢マウスを用いた実験に関しては、2020年度から野生型、IL-22欠損マウスを少しずつ確保しSPF環境下で維持することで高齢マウスを準備中ではあるが、比較的高齢の野生型のマウスに関してはブリーダーからの購入が可能であれば購入し、高齢マウスを準備する時間を短縮することができればと考えている。2020年度には高齢マウスでのナイーヴCD4陽性T細胞の減少も確認したことから、高齢マウスと若齢マウスを比較する実験では、免疫レベルに差が生じてしまう能動免疫の系ではなく、OVA特異的Th細胞を移入する受動免疫の系を利用することを考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度に出席を予定していた学会が、新型コロナ感染症の影響で延期、もしくはオンライン開催となり、学会出席ができなかった。また、新型コロナ感染症の影響で年度初頭のマウスの購入や飼養施設へのマウスの受け入れが制限されたことで、2020年度初頭は動物実験の実施に困難が伴う状況にあったことから、マウスの購入 (特に動物実験施設で長期間維持することで高齢マウスを確保するために必要なマウスの購入) や動物実験施設でのそのマウスの維持費用に関して2020年度の使用計画にずれが生じてしまった。 2022年度実施予定の高齢マウスを用いた実験には、2021年度にブリーダーから比較的高齢の野生型マウスを直接購入し飼養施設で維持し高齢化することも行い、必要な高齢マウスの確保をすることを計画している。これに次年度使用額をあてることを考えている。
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