2020 Fiscal Year Research-status Report
正常上皮細胞と変異細胞の境界で生じる相互作用メカニズムの解明
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20K07559
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
釜崎 とも子 北海道大学, 先端生命科学研究院, 特別研究員(RPD) (20384183)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞競合 / RasV12 / 細胞膜 / BARファミリータンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの超初期段階において、Ras変異細胞が正常細胞に隣接すると、Ras変異細胞は頭頂側に逸脱し、上皮細胞層から排除されるが、この抗腫瘍作用の形態・分子メカニズムはほとんど明らかにされていない。本研究では、Ras変異細胞 (以下、変異細胞とする) と正常細胞の境界を構成する細胞膜に着目した詳細な電顕解析を行い、その形態制御を行うBARタンパク質を探索している。これまでに、混合培養において、正常細胞と変異細胞の境界を構成する正常細胞側の細胞膜で、finger-like protrusionの形成が亢進することが明らかになった。本年度、FBP17をノックダウンした変異細胞を用いた解析により、変異細胞によってFBP17を介して自律的に形成されるfinger-like protrusionが、隣接する正常細胞の細胞非自律的なfinger-like protrusionの形成を誘起することが推測された。次に、正常細胞と変異細胞の混合培養における、FBP17の上流因子Cdc42の機能解析を行った。その結果、変異細胞を囲む正常細胞においてCdc42が活性化することが明らかになった。また、Cdc42阻害剤 ML141もしくはAnti oxidant Trlox処理によって、混合培養における活性化Cdc42の上昇が抑制された。ML141処理によって、正常細胞に囲まれた変異細胞間のみならず、変異細胞に隣接する正常細胞のfinger-like protrusionの形成も抑制されていることも確認した。本研究により、変異細胞の正常細胞層からの排除過程において、正常細胞と変異細胞の境界で、Cdc42を上流として形成されるfinger-like protrusionを介した相互認識が行われることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新型コロナウィルス感染防止対策として、研究室の出入りを交替制にした時期があったため、一時的に研究活動時間を短くせざるを得ない状況であったが、論文執筆へ向けて、着実に必要なデータを蓄積して行くことができた。研究面での主な進展としては、正常細胞と変異細胞の相互認識の仕組みである、”protrusion to protrusion response” を提唱することに成功した。本研究によって、新しい細胞間相互認識メカニズムの存在を示唆した。また、finger-like protrusionを制御すると考えられるCdc42の活性化の上流として、酸化ストレスの影響も推測され、次年度以降に分子・形態メカニズムの解明が期待される。今年度までのデータを筆頭著者論文として纏め、次年度には、論文が受理されると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの結果から、正常上皮細胞層からの変異細胞の排除過程においては、正常細胞と変異細胞の細胞間接着部位で、FBP17を介した相互認識が行われることが推測された (protrusion to protrusion response)。このfinger-like protrusionを介した相互認識過程の上流として、酸化ストレスの影響も推測さこのfinger-like protrusionを制御すると考えられるCdc42の活性化の上流として、酸化ストレスの影響も推測されたことから、Trolox処理条件下での電顕解析を進め、次年度以降に分子・形態メカニズムの解明に迫る。また、マウスの小腸上皮細胞層にRas変異細胞をモザイク状に誘導する系 (細胞競合モデルマウス) を用いて、in vivoにおける微細構造レベルの機能解析法を確立することにより、候補タンパク質 FBP17やfinger-like protrusionが超初期がんの生体マーカーとなり得る可能性を探る。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウィルス感染防止対策として、研究室の出入りを交替制にした時期があったため、一時的に研究活動時間を短くせざるを得ない状況であったことや、細胞培養用のプラスチック器具類全般の納品が大幅におくれたため、来年度に予算を繰り越すことになった。次年度には、これらの新型コロナウィルス流行による影響が緩和されると思われるため、今年度よりも多くの実験用品に予算を充てる計画である。
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Research Products
(1 results)