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2021 Fiscal Year Research-status Report

タンパク質シトルリン修飾の破綻が大腸がんの発生と進行に果たす役割の解明

Research Project

Project/Area Number 20K07560
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

舟山 亮  東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20452295)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsシトルリン化 / PADI2 / 大腸がん / 翻訳後修飾 / スプライシング / マイクロエクソン
Outline of Annual Research Achievements

令和3年度は、タンパク質シトルリン化酵素PADI2の発現が大腸がん細胞の腫瘍形成能に与える影響を解析した。また、大腸がん組織におけるマイクロエクソンのスプライシング変化が、がんの転移と関連することを発見し、論文発表した(Mochizuki, Funayama et al., 2021, Int J Cancer)。
大腸正常組織に比べて大腸がん組織ではPADI2の発現量が著しく低下することから、PADI2の発現はがん細胞の増殖を抑制していると考え、この仮説をヌードマウスの腫瘍形成実験により検証した。PADI2を過剰発現する大腸がん細胞株を作製し、ヌードマウスの皮下に移植した。その結果、PADI2発現細胞の腫瘍と、PADI2を発現しない対照細胞の腫瘍とで、腫瘍サイズに有意な変化は認められなかった。しかし、PADI2発現細胞の腫瘍を免疫組織染色により詳しく調べたところ、PADI2の発現を喪失した細胞が出現している一方で、PADI2の発現を保持した細胞は腫瘍内で壊死していることが明らかになった。PADI2の発現は腫瘍環境で細胞死を引き起こすことにより、がん細胞の増殖を抑制している可能性が考えられた。
長さが3~15塩基の微小なエクソン(マイクロエクソン)の解析では、マイクロエクソンのスプライシング変化とがんの進行との関連に焦点を当てて解析を進めた。その結果、大腸がん組織ではスプライシング因子RBFOX2とPTBP1がマイクロエクソンの選択的スプライシングを制御していること、マイクロエクソンのスプライシング変化はがん細胞の転移と関連することを見出した。大腸がん組織におけるRBFOX2とPTBP1の発現量の変化が、マイクロエクソンのスプライシング変化を介して、がん細胞の転移能を向上させているモデルを考え、この新たな知見を論文発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

大腸がん組織でPADI2の発現が喪失していることは、我々を含めた複数の研究グループが報告しているが、PADI2の発現喪失がどのように大腸がんの進行に寄与するのかは不明である。本研究で実施したPADI2発現細胞の腫瘍形成実験の結果、PADI2の発現はがん細胞の細胞死を引き起こすことが示唆された。したがって、PADI2の発現喪失は腫瘍環境でのがん細胞の増殖に必要なのかもしれない。PADI2の発現が腫瘍環境で細胞死を引き起こすメカニズムを明らかにできれば、PADI2に着目したがんの新たな治療戦略の開発につなげられると期待している。
マイクロエクソンはヒトの数千の遺伝子に存在する微小なエクソンで、そのスプライシング変化は自閉症スペクトラムの発症と関連することが知られていた。しかし、マイクロエクソンのスプライシング変化が、がんの進行に果たす役割についてはほとんど明らかになっていなかった。本研究では、PADI2の解析に用いた大腸がん組織のRNA-seqデータセットを使用し、大腸がんの進行とマイクロエクソンのスプライシング変化との関連を調べた。その結果、大腸がん組織におけるマイクロエクソンのスプライシング変化は、がん細胞の転移と関連すること、このスプライシング変化はスプライシング因子RBFOX2とPTBP1により制御されていること、などが明らかになった。大腸がん組織のRNA-seqデータをきっかけに開始したPADI2の解析から、予想外に研究が展開し、大腸がんの進行とマイクロエクソンのスプライシングに関する新たな研究へと発展させることができた点は、大きな価値があると考えている。

Strategy for Future Research Activity

令和4年度は、PADI2遺伝子を改変した腸管上皮オルガノイドを活用し、PADI2の発現喪失が大腸がんの進行に果たす役割の解明を推進する。特に、PADI2の発現が腫瘍環境で細胞死を引き起こしている点に着目し、PADI2が細胞死を誘導する制御機構を明らかにする。免疫細胞の一部を失ったヌードマウスに加えて、NOG免疫不全マウスや、免疫能力をもつマウスを用いて腫瘍形成実験を実施することで、PADI2発現による細胞死と免疫システムとの関連を明らかにできると考えている。
大腸がんの転移に関わるマイクロエクソンの解析については、マイクロエクソンのスプライシング変化が当該遺伝子の機能に果たす役割を明らかにして、この研究をさらに発展させる。また、RBFOX2とPTBP1が微小なエクソンのスプライシングを制御する分子機構を明らかにして、マイクロエクソンのスプライシング制御機構とその機能的役割の両面から研究を推進する。

Causes of Carryover

シトルリン化タンパク質を特異的に濃縮する解析では、当初、市販の試薬キットを用いた解析を計画していたが、解析方法に関する論文を精査し、より安価な試薬を用いた解析システムを構築することができた。その結果、シトルリン化タンパク質の解析に使用する試薬費用を予想以上に切り詰めることができた。また、細胞培養費用なども見直し、研究費用の削減に努めたため、当該助成金が生じた。当該助成金は令和4年度に予定している、腸管上皮オルガノイドの解析、および、免疫不全マウスを用いた腫瘍形成能の解析に使用する。オルガノイドの形成・培養のための細胞培養試薬ならびにプラスチックウェア、腫瘍形成のレシピエントとして使用するための免疫不全マウス、などの購入に使用する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2021 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Alternative microexon splicing by RBFOX2 and PTBP1 is associated with metastasis in colorectal cancer2021

    • Author(s)
      Mochizuki Y*, Funayama R*, Shirota M, Kikukawa Y, Ohira M, Karasawa H, Kobayashi M, Ohnuma S, Unno M, Nakayama K. *Equal contribution.
    • Journal Title

      International Journal of Cancer

      Volume: 149 Pages: 1787-1800

    • DOI

      10.1002/ijc.33758.

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] マイクロエクソンの選択的スプライシングは大腸がん細胞の転移を制御する2021

    • Author(s)
      舟山亮
    • Organizer
      東北大学創生応用医学研究センター 基盤研究部門 第1回オンラインセミナー
  • [Presentation] マイクロエクソンの選択的スプライシングは大腸がん細胞の転移を制御する2021

    • Author(s)
      舟山亮, 望月保志, 城田松之, 菊川柚奈, 大平優丈, 中山啓子
    • Organizer
      第44回日本分子生物学会年会
  • [Remarks] 東北大学大学院医学系研究科細胞増殖制御分野ホームページ

    • URL

      http://www.devgen.med.tohoku.ac.jp/index.html

URL: 

Published: 2022-12-28  

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