2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of lncRNA functioning in both cancer and human stem cells, and its role in refractory cancer
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20K07561
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山形 一行 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (60455912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 知明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50447299)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 難治がん / ヒト幹細胞 / IncRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織中の腫瘍起源細胞が再発や転移の源となることから、難治性や治療抵抗性のがん病態には休眠状態や多分化能を標的としたがん幹細胞 特性の解明が重要である。申請者らはp53誘導型長鎖非コードRNA(lncRNA)群を同定し、lncRNAがESの未分化性維持やES初期分化におけるlinage commitmentの制御因子として作用する可能性を見出した。本研究では、lncRNA-p53のがん幹細胞特性における役割と作用メカニズム解明を目指し、難治性がんやがん3次元培養の発現解析と「生物学的・生化学的・高解像度の」機能解析を進める。難治性・治療抵抗性がんに対し革新的創薬の創出が期待できる。 難治性や治療抵抗性のがん病態の解明には、「休眠状態」や「多分化能」を標的としたがん幹細胞特性のメカニズム解明が重要であるが、その分子機構ついては十分に明らかにされていない。そこで、本研究の目的として、これまでに同定した新規の核局在型lncRNA(以下lncRNA-p53)の がん幹細胞特性における役割とその作用メカニズム解明を行い、「生物学的・生化学的・高解像度の」機能解析を推進している。下記の現在までの進捗状況で示す通りlncRNA-p53がヒトES細胞の未分化性を制御する因子であることを多角的に証明した。また、今後の研究方針に示す通り、lncRNA-p53とゲノムストレス応答、並びにがんでの抗癌剤耐性に関わる兆しが得られている。本研究をさらに推進し、lncRNA-p53複合体依存的ながん幹細胞特性制御法開発など、難治性や治療抵抗性がんに対する革新的創薬の創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1でヒトES細胞特異的なp53標的lncRNA欠損変異体の作成と機能評価を行った。しかし、lncRNAの欠損変異体は他の遺伝子と比較して非常に難度が高かった。複数の欠損変異体を樹立したが、そのうち一つは未分化性や増殖性を維持することが出来なかった。そこで方針を転換し、薬物に応答してlncRNA-p53を発現させる実験系を確立した。その結果、lncRNA-p53はヒトES細胞の未分化性を急速に失わせることを発見した。 計画2でヒトES細胞におけるlncRNA-p53の結合因子の探索を立案した。その結果、新潟大学教授の松本雅記教授との共同研究が功を奏し、多数の因子の同定に成功した。バイオインフォマティクス的手法を駆使した結果、非常に興味深いことに新規p53標的lncRNA-p53は未分化性を維持する転写因子群と相互作用し、未分化性を失わせる機能を有することを発見した。 計画3で新規p53標的lncRNA-p53の高解像度なRead outを立案したが、千葉大学で共用顕微鏡に最新型の共焦点レーザー顕微鏡を導入したことにより、ヒトES細胞におけるlncRNA-p53の高解像度な局在情報を得た。その結果、ゲノムストレスに応答してlncRNA-p53が核内に局在することを明らかにした。 さらに、R2年度に、研究計画申請時にはなかったシングルセルRNA-seqの機器が導入されたことにより、計画1-3の結果をシングルセルレベルで再現するとともに、今後の研究方針で示す通り予想外の細胞系譜、並びにゲノムストレス応答機構の存在が示唆される結果が得られた。 R3年度得られた以上の結果をまとめ、第44回日本分子生物学会(2021年)ワークショップ 「核とミトコンドリア研究」から視えてきた疾患病態の先端分子生物学」で研究成果を発表し、高い評価を得られた。現在、本研究をまとめて投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度に、研究計画申請時にはなかったシングルセルRNA-seqを行うための機器、最新型の共焦点レーザー顕微鏡が千葉大学医学部に導入された。この利点を大いに生かし、また上記のように想定外の結果が得られたことから、シングルセルRNA-seqを行い、細胞分化の系譜をさらに明らかにしていく。R3年度の予備検討では、lncRNA-p53の未分化性の抑制機構をsingle cellレベルで非常に良く再現されていた。また、未分化性を喪失したのち、予想もしなかった細胞の系譜への分化を促すことをscRNA-seq及び予備検討で確認している。R4年度は上記で示した結果の詳細を確認していく。また、lncRNA-p53の発現がゲノムストレス耐性を示すという非常に興味深い予備結果が得られている。この詳細もscRNA-seqを用いてシングルセルレベルで明らかにしていく。さらに、lncRNA-p53はヒトES細胞を超えて、多くのがんで高発現し、予後に影響していることを確認している。そのため、薬物誘導型lncRNA-p53を複数のがん細胞株で樹立し、抗癌剤耐性への影響を検討する。また、バイオインフォマティクス的手法を駆使し、がんとlncRNA-p53の更なる関係性を明らかにする。これらの結果をまとめ、R4年度早期に論文を投稿する。本年度も国内外の学会に発表するとともに、R4年度中の論文受理を目指す。
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[Presentation] genetic subtypingに基づくコルチゾール産生腺腫の遺伝子発現・病理所見の包括的解析2021
Author(s)
樋口誠一郎, 吉井聡美, 高躍, 姚躍, 永 秀和, 橋本直子, 中山哲俊, 西村 基, 山形一行, 横山真隆, 柴田 貴久, 伴 俊明, 藤井陽一, 小川誠司, 田中知明
Organizer
第94回日本内分泌学会学術総会
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[Presentation] Multi-Omicsから視た機能性下垂体腺腫の転写ネットワークの役割2021
Author(s)
高 躍, 村田和貴, 堀口健太郎, 永野秀和, 橋本直子, 中山哲俊, 樋口誠一郎, 山形一行, 横山真隆, 岩立康男, 田中知明
Organizer
第94回日本内分泌学会学術総会
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