2021 Fiscal Year Research-status Report
悪性脳腫瘍の不均一性と治療抵抗性に働く細胞系譜転換の分子基盤
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20K07566
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 昌彦 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70285633)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膠芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫(グリオーマ)は、治療抵抗性の予後不良悪性疾患であり、未だ治癒に至る有効な治療法は開発されていない。グリオーマは、遺伝子発現プロファイルによりいくつかのサブタイプに分類されている。しかし、様々なストレスが刺激となり腫瘍内においてサブタイプ間での移行、いわゆる細胞系譜転換と、それに伴う細胞形質変化を生じることが知られている。特に、比較的予後が良好なproneuralサブタイプの腫瘍が、再発時に悪性度が高く治療抵抗性のmesenchymalサブタイプの腫瘍に変わるpronerual-mesenchymal transitionが問題になっている。このサブタイプ転換とmesenchymalサブタイプの治療抵抗性の機構を明らかにするために、mesenchymalサブタイプマーカーの1つであるCD44を利用し、患者由来膠芽腫細胞TGS04の細胞培養から、CD44高発現細胞と低発現細胞とを分画し、RNA-seqを行った。その結果、CD44高発現細胞はmesenchymalサブタイプの発現パターンを、CD44低発現細胞はproneuralサブタイプの発現パターンを示すこと、また、OLIG2の強制発現により、mesenchymalサブタイプの発現パターンが抑制されることを見出した。さらに、RNA-seqの結果をもとに、CD44高発現細胞にて高発現している遺伝子のsgRNAライブラリーを作成し、TGS04細胞に導入し、治療抵抗性に関与する遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、ノックアウトにより、CD44の発現が下がる遺伝子や、グリオーマの主要治療薬テモゾロミドに感受性になる遺伝子の候補を得た。これらをもとに、治療抵抗性に働く細胞系譜転換の分子基盤を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者由来膠芽腫細胞TGS04の細胞培養から、CD44高発現細胞と低発現細胞とを分画し、RNA-seqを行い、それぞれの細胞群の遺伝子発現プロファイルの網羅的解析を行った。また、RNA-seqの結果をもとに、CD44高発現細胞にて高発現している遺伝子のsgRNAライブラリーを作成し、治療抵抗性に関与する遺伝子のスクリーニングを行った。現在は、その候補遺伝子の解析を行っている。以上より本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Cas9を用いたスクリーニングの結果をもとに、治療抵抗性に関与する遺伝子の同定とそのメカニズムの解析を行う。また、マウスの脳に患者由来膠芽腫細胞を移植し、形成される腫瘍をもとに、腫瘍内血管に対するproneuralサブタイプ腫瘍細胞とmesenchymalサブタイプ腫瘍細胞の分布を、3Dイメージングによって解析する。これにより、それぞれのサブタイプ腫瘍細胞のニッチや治療抵抗性に働く細胞系譜転換の分子基盤を明らかにする。
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Causes of Carryover |
一部の消耗品の割引により差額が生じたため。 少額のため、使用計画は変更せずに、物品費として使用する。
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