2022 Fiscal Year Annual Research Report
骨転移した乳がん細胞選択的に発現亢進するレセプター分子の病態生理学的役割の解析
Project/Area Number |
20K07567
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐々木 宗一郎 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50583473)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向田 直史 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (30182067) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 乳がん / 骨転移 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Triple-negative (TN) 乳がんにおいて、高頻度で起きる骨を含む種々の臓器への転移が患者の生命予後に大きく影響する。破骨細胞を標的とした治療が汎用されているが、対症的であることに加え顎骨壊死などの重篤な副作用を引き起こすこともあり、新たな治療法の開発が求められている。 研究代表者は、乳房脂肪組織移植によって骨への自然転移を高率に起こす乳がん細胞株、4T1.3をマウス乳がん細胞株4T1から樹立し骨転移過程を解析した。骨内の4T1.3は親株と比べて、線維芽細胞(CAF)を中心とした微小環境を構築すると同時に、細胞接着型Gタンパク共役受容体の1つであるGPR56/ADGRG1を高発現していた。さらにCAFではGPR56/ADGRG1のリガンドであるⅢ型コラーゲンの発現が亢進していた。別のマウス乳がん細胞株であるTS/Aやルイス肺がん由来細胞株(3LL)から樹立した高骨転移株でも同様に骨髄内に投与した際に、GPR56/ADGRG1の発現亢進が確認され、骨転移能とGPR56/ADGRG1発現との関連性が示唆された。 4T1, TS/A,3LL細胞から樹立したGPR56/ADGRG1強発現クローンではそれぞれ、骨内での高い増殖能を示した。さらに、4T1.3に対してドキシサイクリン誘導性にGPR56/ADGRG1の発現を抑制できる細胞株を樹立し、乳腺脂肪組織移植による自然骨転移モデルの系を用いて、原発巣除去後からGPR56/ADGRG1の発現抑制による骨転移巣形成への影響を評価することで臨床応用の可能性を検討したところ、GPR56/ADGRG1の発現抑制により骨内の腫瘍巣の形成は有意に減弱した。 以上の結果、GPR56/ADGRG1は骨転移巣形成における線維芽細胞と腫瘍細胞との相互作用を媒介する重要な分子であり、乳がん骨転移に対する新たな治療標的となる可能性が強く示唆された。
|
Research Products
(2 results)