2023 Fiscal Year Annual Research Report
新規lncRNA ELIT-1によるHBV複製および肝がん悪性化の分子機構
Project/Area Number |
20K07569
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
酒井 聡 浜松医科大学, 医学部, 助教 (50566081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | lncRNA / 肝がん悪性化 / がん抑制遺伝子 / HBV複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、TGFβにより発現低下するlncRNAに着目し、がん抑制遺伝子として報告のあるLINC00173の機能解析を実施した。RNA-Seqによる網羅的解析から、アポトーシスなどに機能するがん抑制遺伝子FHITがLINC00173の発現低下と連動し、標的遺伝子であることが判明した。FHIT及びLINC00173の発現抑制機構は、SNAILが寄与することが判明し、LINC00173はSNAILと結合することが判明した。LINC00173はSNAILと結合することにより、FHITのSNAILによる発現低下を阻害すると考えられた。in Silico解析からLINC00173とFHITの発現が高い場合は予後が良好で、SNAILの高発現と逆相関することが判明した。これらのデータをまとめInt J Mol Sci誌に投稿し採択された。さらに、TGFβにより誘導されるELIT-2と名付けたlncRNAの解析を行った。肝がん細胞株においてELIT-2をノックダウンすると、TGFβにより誘導されるEMTが抑制された。詳細な分子機構は解析中だが、ELIT-2はELIT-1の発現上昇に関わるlncRNAであることが判明した。 我々の見出したlncRNAであるELIT-1がHBV複製時に発現上昇することを見出したことから、当初の研究目的としてHBV複製時におけるELIT-1の機能解析を設定した。しかしながらR2年度の本研究において、ELIT-1をノックダウンしても顕著なB型肝炎ウイルス量の低下があるとは言えないことが判明した。また、ELIT-1の発現阻害剤のスクリーニングから得た候補化合物はウイルス量の顕著な低下を示さなかった。しかし、HBV複製時に変動する別のlncRNAとしてlincNMRを見出し、TGFβ-SMAD経路を介して誘導されること、DNA変異に関わるAPOBEC3Bを正に制御するがん遺伝子であることをCarcinogenesis誌にまとめた。助成期間後半は当初の予定を変更することになったが、論文を2報発表することができた。
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