2021 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の複製ストレスを解消する新規lncRNAの機能解明
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20K07570
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 美穂 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80548470)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 長鎖非翻訳RNA / がん細胞 / 複製ストレス / R-loop |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞に特徴的な高い複製ストレスは、ゲノム不安定性をもたらし、発がんの促進やがんの進展を加速させることがよく知られている。しかし、がん細胞が高い複製ストレスに晒されながらも、複製を完了させ細胞増殖していく機構は完全に解明されていない。 私たちはこれまでに、複製ストレスによって発現が誘導される長鎖非翻訳RNA(lncRNA)、TUG1を同定した。タンパク質をコードしないlncRNAは近年DNA損傷修復との関連が報告されているが、私たちはTUG1がDNA損傷の原因となるR-loopを解消する役割をもつ可能性を見出した。 lncRNAに結合するタンパク質を同定する手法を用いて、複製ストレス下でTUG1と相互作用するタンパク質を解析したところ、R-loopを解消することが知られているRNAヘリケースタンパク質の一種、DHX9を同定した。TUG1をノックダウンするとR-loopの蓄積がおこることから、TUG1は複製ストレス下においてDHX9と相互作用しR-loopを解消する機能を持つことが示唆された。私たちは、DHX9とTUG1が細胞内で直接結合することを実験的に示した。また、TUG1の部分欠損を用いた実験によって、TUG1のR-loop解消機能はDHX9との結合を介して発揮されることを証明した。さらに、超解像顕微鏡を用いたイメージングにより、TUG1とR-loopが核内で共局在することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、lncRNAと結合するタンパク質を網羅的に同定するために、CRISPR技術を利用して目的のRNAに結合するタンパク質を生細胞内で同定するCRISPR-assisted RNA-protein interaction detection method (CAPID)法を行った。TUG1を標的とするgRNAを導入して同定した、TUG1と相互作用するタンパク質群の中に、DHX9をはじめとする複数のRNA helicaseタンパク質が含まれていたことから、TUG1がDNA/RNA代謝に関わる機能をもつ可能性が示唆された。DHX9の既知の性質として、DNA複製フォークが転写機構と衝突した際に形成されるR-loopへの結合が報告されている。そこでTUG1をノックダウンした細胞におけるR-loopの量をS9.6抗体を用いたドットブロット法により測定したところ、R-loopの顕著な増加が認められた。次にCLIP-qPCRによりDHX9はTUG1の3‘末端に直接結合していることを明らかにした。また、LacO-LacR tetheringシステムを利用してTUG1をR-loop近傍に結合させると、R-loopが解消され減少した。一方、DHX9結合ドメインを欠いたTUG1は、R-loop近傍に結合させてもR-loopを減少する効果が認められなかった。これらの結果からTUG1は複製ストレス時にR-loopの解消に働く分子であると考え、現在ターゲットとなるR-loopの種類を解析する実験を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はTUG1が解消するR-loopの性質を詳しく解析し明らかにする。また、TUG1がR-loopへリクルートされる分子メカニズムを明らかにするため、TUG1と相互作用する他のタンパク質の同定をすすめる。これらのTUG1相互作用タンパク質がTUG1と核内で共局在することを超解像顕微鏡を用いて示す。これらの実験から、がん細胞が複製ストレスを解消する未知の分子機構の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
Mass spectrometryを用いたタンパク質の同定で複数サンプルをまとめて解析することが可能になり、試薬代と解析費用の一部が不要になった。次年度使用額は研究をさらに推進させるために、高解像度でのイメージングを行うための試薬購入費用に充てる。
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Research Products
(2 results)