2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K07574
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
米田 光宏 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (80508367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 敬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90306275)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒストンH3リシン4番目(H3K4)メチル化酵素Mixed Lineage Leukemia (MLL)の遺伝子変異がエピゲノム変化をもたらし、細胞を癌化させる分子メカニズムを解明することが最終目標である。MLL遺伝子変異を有する(変異型MLL)大腸癌細胞においてMLLの標的癌遺伝子または癌抑制遺伝子を網羅的に同定し、癌化経路特定の足がかりとする。 本研究は、MLL遺伝子変異を有する固形癌に対する早期診断・予後診断や、より有効な分子標的療法の発見につながる礎となる可能性を秘めている。メカニズム解明のためのin vitro転写は現所属研究室を主宰する伊藤敬教授が開発したACF/NAP-1クロマチン形成法(Ito et al., Cell 1997)を応用して私たちの研究室が独自に発展させた手法を用いる。 正常型MLLに比べ、変異型MLL複合体は、クロマチンへの結合部位が変化して新たな癌遺伝子の転写活性化や癌抑制遺伝子の不活性化が起きてクロマチン環境が撹乱されるため癌が進行すると推測される。先ずは変異型MLL複合体の標的癌関連遺伝子の網羅的な同定を行うため、変異型MLL特異的なsiRNAノックダウンは不可能ではあるが、MLL遺伝子変異を有する細胞と変異のない細胞において、正常および変異型MLLを両方ノックダウンした。 結果、MLLノックダウンにより、MLL遺伝子変異を有する大腸癌細胞では細胞増殖が抑制された。しかし、変異のない大腸癌細胞において、細胞増殖は抑制されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MLL4遺伝子変異特異的な標的遺伝子を同定するため、MLL4遺伝子変異を有する細胞と変異のない細胞において、正常および変異型MLLを両方ノックダウンした。一様に75%くらいMLL4遺伝子の発現がコントロールに比べて抑えられたMLL4遺伝子変異を有する細胞と変異のない細胞由来のRNAサンプルをそれぞれ5つ得た。これらのRNAサンプルを用いてRNA-seqを行うためのライズラリーを作製する。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックダウンしてRNA-seqした場合、ノックダウンによって発現低下がみられた癌遺伝子もしくは発現が上昇した癌抑制遺伝子が標的遺伝子候補となると考えられる。さらに、変異型に特異的であればMLL遺伝子変異特異的な標的遺伝子を同定できる。そのため、正常および変異型MLLを両方ノックダウンし、RNA-seqを実施し、MLL標的遺伝子候補リストを作製する。 さらにMLL遺伝子変異を有する細胞と変異のない細胞において、クロマチン免疫沈降シーケンス (ChIP-seq)を用いて、正常型と変異型MLLの結合領域を網羅的に同定・比較する。 これら二つのことを統合的に解釈し、変異型MLL特異的な標的癌遺伝子および癌抑制遺伝子を同定する。
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Causes of Carryover |
細胞培養のための消耗品費の支出が予定していたよりも少額だったため、数百円を次年度に繰り越した。 繰り越した助成金を付加してRNA-seq実施のための試薬購入費とする。
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