2021 Fiscal Year Research-status Report
ゴルジ体微小管の構築制御に基づく癌細胞の集団的浸潤機構の解明
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20K07575
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
西田 満 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30379359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アセチル化チューブリン / 安定化微小管 / ゴルジ体由来微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌細胞株DLD細胞を用いて集団的浸潤過程での、リーダー細胞とフォロワー細胞におけるゴルジ体由来および 中心体由来微小管の動態について検討することとした。まず、安定化微小管のマーカーであるアセチル化チューブリンの免疫蛍光染色を行った結果、癌細胞集団の中でも、特にリーダー細胞において浸潤方向へ極性化したアセチル化チューブリンの強い染色が観察され、微小管が安定化し蓄積していることが確認された。そこで、リーダー細胞での微小管安定化におけるIFT20の役割について検討するため、IFT20をsiRNAを用いてノックダウンしたDLD1細胞を用いて同様の解析を行った。その結果、IFT20をノックダウンしたリーダー細胞においては、アセチル化チューブリンで染色される微小管が浸潤方向とは関係ない方向に伸びたり、曲がったりしていることが観察された。同様の結果は、別の大腸癌細胞株HCT116細胞においても認められた。したがって、リーダー細胞においてIFT20は極性化した安定化微小管のネットワーク形成に必須な役割を担っていることが示された。一方、これらの実験において観察されたアセチル化チューブリンのほとんどは、中心体に接していなかったことから、ゴルジ体由来微小管である可能性が考えられた。実際、アセチル化チューブリンとゴルジ体の二重染色を行った結果、ほとんどの、アセチル化チューブリンはゴルジ体と接していることが観察された。さらに、IFT20 をノックダウンすることによりゴルジ体周囲のアセチル化チューブリンの蛍光強度が優位に低下した。したがって、IFT20はリーダー細胞においてゴルジ体由来微小管の安定化と極性化に寄与することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の大腸癌細胞株を用いて実験結果が得られたこと、また、前年度コロナ禍のためにできなかった共同研究機関での超解像顕微鏡観察ができたことで、前年度の進捗の遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
IFT20がゴルジ体由来微小管の安定化・極性化を制御する機構を理解するため、ゴルジ体由来微小管の動態をライブセルイメージングによって解析する。具体的には、微小管伸長端に特異的に結合するタンパク質であるEB1やCLASPをGFP融合タンパク質としてDLD1細胞に安定発現させ、集団浸潤中のリーダー細胞におけるそれらの動態をライブイメージングし、粒子追跡解析等によって評価する。また、集団的浸潤においてIFT20がリーダー細胞のゴルジ体配置とゴルジ体内輸送の制御に関わる可能性について検討する。さらに、リーダー細胞とフォロワー細胞をFACSで分離し、RNAシーケンス等によってリーダー細胞特異的に発現する遺伝子を同定する。同定された遺伝子について、ノックダウン実験により、集団的浸潤、ゴルジ体微小管の構築、ゴルジ体の配置、ゴルジ体輸送等における役割を明らかにする。また、マウスモデルを用いて癌転移における役割についても検討する。
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Causes of Carryover |
当初の計画していた研究を一部実施することが出来なかったため次年度使用額が生じた。実施出来なかった研究は、令和4年度の計画と合わせて実施する予定のため、当該助成金は令和4年度分の助成金と合わせて使用する。
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Research Products
(5 results)