2022 Fiscal Year Research-status Report
ゴルジ体微小管の構築制御に基づく癌細胞の集団的浸潤機構の解明
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20K07575
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
西田 満 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30379359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゴルジ体微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、IFT20がゴルジ体の浸潤側への再配置を制御していることやリーダー細胞における安定化微小管の形成に関与していることを見出した。これらの知見を踏まえ、本年度はIFT20がゴルジ体由来微小管の安定化・極性化を制御する機構を理解するため、ゴルジ体由来微小管の動態をライブセルイメージングによって解析した。まず、複数の大腸癌細胞株に微小管プラス端マーカーであるEB1-GFPの発現プラスミドを導入し、安定発現株を複数樹立した。これら の各細胞株について、ライブセルイメージング解析によりEB1-GFPの移動速度を計測した。その結果どの細胞株も同じスピードでEB1-GFPが移動することが確認されたため、以降はDLD1細胞の1クローンを主に用いて解析した。IFT20が浸潤細胞の微小管動態にどのような役割を担っているのか検討するため、EB1-GFP発現DLD1細胞の2D invasion assayにおいて、リーダー細胞でのライブイメージング解析を行った。EB1-GFPのトラッキング解析のため、MatLabおよびアドインソフト のU-Trackを用いた。各トラックの浸潤方向に対する角度(浸潤方向に伸長するものが0°、中心側へ伸長するものが180°となる)を計測した結果、コントロール細胞に比べIFT20ノックダウン細胞では浸潤方向(0°方向)に伸長する微小管の数が有意に低下した。さらに、IFT20をノックダウンしたリーダー細胞において、微小管伸長が一時的に停止する頻度が増加した。一方、微小管の伸長速度自体はIFT20ノックダウンによる変化は認められなかった。以上の結果から、DLD1細胞の集団的浸潤において、IFT20はリーダー細胞における極性化した微小管伸長を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種大腸癌細胞株におけるEB1-GFPの安定発現細胞株の作製と解析に想定以上に時間を要したため、FACSによるリーダー細胞とフォロワー細胞の解析が十分に実施することができなかった。また、本研究の遂行過程で、大腸癌細胞のゴルジ体におけるIFT20とc-Srcの関連性が新たに見い出され、その検証に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を遂行する過程で、IFT20のノックダウンによってリーダー細胞のゴルジ体におけるリン酸化c-Srcが減弱することを見出した。ゴルジ体におけるc-Srcの活性化はタンパク質の順行性輸送を促進することが知られている。そこで今後は、リーダー細胞においてIFT20がc-Srcを介してタンパク質輸送を制御している可能性について検討する。我々はIFT20がMT1-MMPのゴルジ体内輸送を促進することを以前報告しているため、本研究ではMT1-MMPの輸送に焦点を当てる。まず、リーダー細胞におけるMT1-MMPのゴルジ輸送効率をライブイメージングによって計測する。そのため、MT1-MMPを温度感受性VSVG(水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質)変異体および蛍光タンパク質との融合タンパク質としてDLD1細胞に発現させ、培養温度を変化させることによってMT1-MMPの小胞体→シスゴルジ→トランスゴルジネットワーク(TGN)→細胞膜の各輸送効率を解析する。これらの結果を踏まえ、IFT20およびc-Srcの発現抑制または活性阻害がそれらの輸送効率に与える影響について解析する。次に、リーダー細胞におけるMT1-MMPとCOPIのゴルジ体における相互作用を、蛍光寿命イメージング顕微鏡(FLIM)法、およびPLA(proximity ligation assay)法を用いて解析する。さらに、IFT20およびc-Srcの発現抑制または活性阻害がそれらの相互作用に与える影響についても同様の方法で解析する。
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Causes of Carryover |
当初予定の実験の一部を実施できなかったため次年度使用額が生じた。試薬等の物品費として翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する。
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Research Products
(4 results)