2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of the new therapeutic target of fatty acid metabolism for malignant glioma
Project/Area Number |
20K07576
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
遠藤 仁司 自治医科大学, 医学部, 教授 (50221817)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / 脂質代謝 / 治療標的 / 腫瘍代謝 / 悪性神経膠腫 / カルニチン / 重症免疫不全マウス / 同所性異種細胞移植モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
神経膠腫は比較的頻度の高い原発性脳腫瘍である。イソクエン酸脱水素酵素(IDH)変異が予後良好なマーカーとされるがその理由は不明であったが、申請者は神経膠腫の臨床検体を用いた網羅的メタボローム解析から、予後良好な検体において変異IDHにより産生される腫瘍代謝物(2HG)がカルニチン合成系の酵素を阻害することにより脂肪酸代謝が抑制され、腫瘍の増生が抑制されるという機序を同定した。本研究は、in vitroおよびin vivo系でカルニチン合成酵素 BBOX1が悪性神経膠腫の治療標的であることのPOCを獲得することを目的とする。 昨年度までは、①in vitroの評価系として、ヒト神経膠腫由来細胞U87MGを用いて、カルニチンが細胞増殖を促進することを、カルニチン不含培地、カルニチン輸送体阻害剤等を用いて明らかにした。さらに、BBOX1を過剰発現したU87MG細胞を用いて、BBOX1が腫瘍細胞の増殖を促進することを明らかにした。また、②CDXマウスを作製してin vivoでの評価系を構築するために、まずBBOX1を欠失した高度免疫不全マウスを作製しその性質を検討した。すなわち、NOD-scidマウスにIL2RgammaおよびBBOX1遺伝子の二重欠失変異を導入したマウスを、CRISPR-Casを用いたゲノム編集技術にて作製し、Flowcytometryおよび低カルニチン食にて当該マウスのNK活性の低下と血清カルニチンの低下を確認した。本年度は、本マウスを用いてLuciferase遺伝子を導入したU87MG細胞をベースとして、hBBOX1遺伝子の発現の有無による腫瘍細胞の増殖脳を明らかにするため、脳内に当該細胞を微量注入することでCDXマウスモデルを構築し、継時的なin vivo系での評価を試みた。現在、組織などの詳細な評価を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度までは計画に従い、まずin vitro系での検討を開始し、次にin vivo系の構築を実施した。まず、ヒト神経膠腫由来細胞U87MGを用いてカルニチンの増殖に与える影響を検討した。通常細胞培養液に添加される血清はカルニチンを含む。そこで、カルニチンを除くために透析した血清を代わりに用い、これをカルニチン不含培地とした。これにカルニチンを添加したものをカルニチン添加培地としたところ、カルニチンの添加により細胞増殖が増加した。また、カルニチン輸送体の阻害剤を添加すると、細胞増殖は抑制した。さらにカルニチン不含培地で、BBOX1を過剰発現させるとU87MG細胞は細胞増殖が増加した。以上から、カルニチンは細胞増殖を増加させること、BBOX1はカルニチン合成を亢進させ細胞増殖に寄与することから、BBOX1は、細胞増殖を抑制する治療標的であることがin vitroで示された。 次に、CDXマウスを作製してin vivoでの評価系を構築するために、まずBBOX1を欠失した高度免疫不全マウスを作製した。すなわち、NOD-scidマウスを用いて、IL2RgammaおよびBBOX1遺伝子をゲノム編集にて破壊したダブルノックアウトマウスを作製した。以上から、当初予定のnudeマウスに代えて、より高度免疫不全となるNOD-scidマウスをベースにした移植用BBOX1-KOマウスの作製を行い、現在、安定して生産可能なラインを作製した。また、当該マウスを用いてU87MG細胞を用いたCDXモデルを作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、昨年度構築したCDXモデルを用い、in vivo評価を実施する。 1)ゲノム編集マウスNOD-scid;IL2Rg-KO,BBOX1-KOのライン化と評価:当該マウスは、IL2RgおよびBBOX1の、各々最適の遺伝子変異を選別し、安定供給可能なラインを作製した。BBOX1の機能を検定するために、カルニチン欠乏食で長期飼育したところ、血清カルニチンは低下し脂肪肝が出現したことを確認した。今後、詳細な表現形を解析する予定である。 2)移植用のヒト神経膠腫細胞とCDXモデルマウスの作製と検討:株化した神経膠腫細胞は、腫瘍組織と異なりBBOX1の発現レベルは低い。そのため、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するU87MG細胞(U87-Luc)に、GFPを含むBBOX1を過剰発現する細胞とGFPのみを発現するコントロール細胞を作製し、この細胞を脳に移植した同所性ヒト腫瘍細胞移植モデルを作製し検討した。BBOX1の効果を検討するために、カルニチン欠乏食を用いた。移植した細胞はルシフェラーゼを発現するため、IVISを用いて腫瘍の大きさを非観血的経時的に観察した。今後、組織学的検討や追加の実験を予定している。 一般に、ヒト脳腫瘍の環境をマウスモデルで完全に再現することは難しい。移植した培養細胞の腫瘍形成の際の血管新生の状態や血液からカルニチン供給の差異などにより実際のヒト腫瘍環境を反映されない場合もあり得る。そのため、高度免疫不全のBBOX1-KOマウスを用いることで血清カルニチン値の低い状態で異種細胞移植が可能になるため、移植細胞でのBBOX1によるカルニチン合成の腫瘍形成への効果の評価が可能となる。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由は、1)ゲノム編集によるノックアウトマウス作製が非常に効率が良かったため、系の選抜と維持に時間がかかった、2)実験の再現性を高めるために、in vivoの系の条件検討に時間がかかったことによる。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、大きくは、免疫不全マウス飼育費、フローサイトメトリーの抗体購入費、カルニチン不含飼料(特殊飼料)作製費、ルシフェリンやカルニチン、カルニチン合成酵素阻害剤等の高額試薬代、腫瘍組織解析費、血清生化学解析費用等に使用される予定である(各々数十万円程度)。
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