2020 Fiscal Year Research-status Report
p53変異/欠損による大腸がん微小環境ネットワーク形成に関する個体モデル解析
Project/Area Number |
20K07585
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中山 瑞穂 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (20398225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸がん / p53 / LOH |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の大規模なゲノム解析から、大腸がんを誘発するドライバー遺伝子は明らかになってきたが、転移や再発など悪性化に関わる遺伝子については不明な点が多い。申請者が着目するp53はミスセンス変異を伴う変異型p53として、大腸がんを含む数多くの悪性化がんで発現が認められる。申請者らはこれまでにp53を含む大腸がんドライバー遺伝子の複合変異マウスを作製し、その腫瘍からオルガノイドを樹立した。それらを使った研究により、肝臓への転移には変異型p53発現に加え、野生型p53の欠失(LOH)が必要であることを見出した。ヒト大腸がんにおいて、変異型p53発現腫瘍のほとんどでLOHが認められることから、これらの組み合わせは、大腸がんの悪性化に重要なイベントであることを強く示唆している。また変異型p53発現とLOHの組み合わせをもつマウスおよびヒト大腸がん細胞を用いて、これらに特異的なpathway 解析が進行中であり、変異型p53発現/LOHに依存した転移や再発に重要かつ必須なpathway の特定を目指している。さらにヒト患者の病理組織解析において、p53核蓄積している腫瘍細胞、すなわち変異型p53発現腫瘍においてのみこのpathwayのkey-modulatorの発現がみとめられたことから、ヒト大腸がんにおける悪性化腫瘍の主要なpathway の一つであることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸がんドライバー遺伝子であるApc, Kras, Tgfbr2, p53を含むマウス大腸がんオルガノイドから樹立した細胞(AKTP細胞)において、p53だけの変異を変えたAKTPM/LOH細胞とAKTPNull細胞において、複数のレポーターアッセイをおこない、AKTPM/LOH細胞にのみ非常に活性化されるシグナルpathwayを特定した。このpathwayは、ヒト大腸がん細胞においても変異型p53をもつがん細胞で活性化されており、野生型p53大腸がんでは低い傾向であることも確かめている。また病理組織においても同様の傾向を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸がんドライバー遺伝子であるApc, Kras, Tgfbr2, p53を含むマウス大腸がんオルガノイドから樹立した細胞(AKTP細胞)において、p53だけの変異を変えたAKTPM/LOH細胞とAKTPNull細胞において、複数のレポーターアッセイをおこない、AKTPM/LOH細胞にのみ非常に活性化されるシグナルpathwayを特定した(令和2年度)。本年度は、ヒトやマウスの大腸がん細胞を用いてp53の遺伝子背景依存的な表現型(シングル細胞からのクローン拡大能力や、肝臓転移能力など)と、このシグナルpathwayの関わりを探求する。具体的にはシグナルpathwayのkey-modulatorとなる遺伝子のノックダウンもしくはノックアウトを行い、これらの悪性化性質の改善がみられるかについて、in vitro系やin vivo系で調べる。特に転移巣の形成では腫瘍間質細胞の形成にも着目する。
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